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プレゼント 書評こぼれ話

  弟が亡くなって
  今年の春で
  5年になります。
  弟はけっして私の年齢を超すことなく
  亡くなりました。
  2歳年下だった弟ですが
  その年の差は開くばかりです。
  今日紹介するのは
  やなせたかしさんの『おとうとものがたり』。
  やなせたかしさんのイラストがはいった
  詩集と思って下さい。
  書評にも書きましたが
  やなせたかしさんの弟さんは
  戦争で亡くなりました。
  やなせたかしさんにとって
  かけがえのない弟さんでした。
  いえ、やなせたかしさんだけでは
  ないですね。
  弟はいつだって
  かけがえのない存在です。
  そんなやなせさんが
  弟さんとのことを振り返って
  書いたのがこの詩集です。
  弟だけでなく
  愛する人をなくした
  すべての人に
  読んでもらいたい詩集と
  いえます。

  じゃあ、読もう。

やなせたかし おとうとものがたりやなせたかし おとうとものがたり
(2014/09)
やなせ たかし

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sai.wingpen  君の青春はいったいなんだったのだろう                   

 父親を亡くして涙にくれている娘がいた。そこに男が駆け込んできた。
 開口、「よかった、よかった」という。「もし娘が先に亡くなれば、父親の悲しみはどれほどであったか。ものには順番がある。死も同じ」。
 その言葉に娘はどれほど慰められたことか。
 永六輔さんの話で聞いた。
 この話ではないが、死の順番としてはおじいさん、おばあさん、おとうさん、おかあさん、と来るべき。
 兄弟姉妹でいえば、兄が先で弟はあと。姉が先で妹はあと。
 年老いたものが先で、若い人は先には死んではいけない。
 若い人の死はあまりにも悲しい。

 漫画家やなせたかしさんには弟が一人いた。二人兄弟だ。
 父親が32歳で亡くなり、母親は兄弟を残して再婚する。残された兄弟のうち、弟は伯父の家の養子となった。
 それでも兄弟は幸いにも伯父の同じ家に住むことができた。
 小さい頃は優秀だった兄のたかしさんだが、成長するにつれて弟の方が兄を優るようになっていく。
 そんな弟を「ぼくは自慢したかったのだ/弟をほこりにおもったのだ/でも その底にいくぶんか/ねたみの心もありました」と、たかしさんはこの本の詩の一篇に書いている。
 それほど愛した弟であったが、戦争がその命をうばう。
 22歳の若さで弟は「ちいさな木札」になって逝ってしまう。
 年齢で弟は兄を追い越すことはなかった。
 兄はこの詩集を「自分だけの感傷として、弟へのレクイエムとして」、58歳の時に書いた。
 弟が亡くなって、30年以上の月日が経っていた。

 それでも、この詩集には弟を思う哀惜に充ちている。まるで、今も弟が22歳のままでそこにいるかのようだ。
 やなせさんにとって、弟は小さい頃の弟で、青年の若々しい姿のままにある。
 しかし、どんなに愛した弟であっても、弟のすべてがわかるわけではない。ましてやなせさんは学生の時に東京に出ている。故郷に残った弟のことはわからない。
 だから、書く。
 「弟よ/君の青春はいったいなんだったのだろう」。

 本来自分よりあとに逝くべきものに先立たれたものの悲しみは深い。
 やなせさんはその悲しみをいつまでも大事にしていた。
 2013年10月、94歳で亡くなったやなせさんは、きっと天国で22歳の弟と再会したにちがいない。
  
(2015/01/08 投稿)

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