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プレゼント 書評こぼれ話

  早いもので
  この間年が明けたと思ったら
  その1月も今日でおしまい。
  今日は
  葉室麟さんの『散り椿』を
  紹介します。
  葉室麟さんの作品は
  できるかぎり
  読んでいるつもりですが
  2012年3月に刊行されたこの作品は
  読み落としていました。
  ちょうど『蜩ノ記』で第146回直木賞を受賞したのと
  同時期の作品になります。
  先月の角川文庫の新刊に出たので
  気がつきました。
  書評にも書きましたが、
  この作品の主人公もいい。
  こんな言葉を
  物語の中で口にしています。

    ひとは大切に思うものに出会えれば、
    それだけで仕合せだと思うております。

  なかなかこんな言葉を口にできる
  男はいませんよ。
  女性の皆さん、
  惚れるならこんな男性がいいのでは。

  じゃあ、読もう。

散り椿 (角川文庫)散り椿 (角川文庫)
(2014/12/25)
葉室 麟

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sai.wingpen  こんな男になりたいものだ                   

 正岡子規門下の双璧といえば、高浜虚子と河東碧梧桐(かわひがしへきごとう)である。
 子規の没後、二人の運命は違ったものになったが、碧梧桐の「赤い椿白い椿と落ちにけり」は今でもなお名句として語られることが多い。
 椿の花は花ごとぽとりと落ちることで知られている。この俳句にはそういう気分も詠まれているような感じがする。
 それもまた風情だろうが、武士は首が落ちるようだと忌み嫌ったという。
 その一方で、この作品のタイトルとなっている「散り椿」は花びらが一片一片散っていくそうだ。

 「もう一度、故郷の散り椿が見てみたい」という妻は病床にいる。
 願いは叶いそうにない。
 そんな妻が夫に願ったもうひとつのこと。
 夫は問う。「そなたの頼みを果たせたら、褒めてくれるか」。
 妻が答える。「お褒めいたしますとも」。
 夫の名は瓜生新兵衛。かつて藩の不正を正そうとしながらも策略にはまり藩を追われる。
 妻の名は篠。かつて好きな男と縁組目前で破断となり、その後新兵衛の元に嫁ぎ、夫とともに藩を出た。そして、短い生涯を閉じる。
 そんな妻の願いを叶えるべく、かつて追われた扇野藩に戻った新兵衛を待ち構えていたのは、以前よりも深刻化した藩の派閥争いであった。

 新兵衛が頼ったのは、篠の妹里美の屋敷。
 里美の夫はかつて新兵衛とともに藩の道場で四天王と呼ばれていた武士だが、何事かの策略により自害し果てていた。
 その遺児藤吾がこの長い物語の語り部のように、さまざまな事件に関わっていく。
 篠が願ったものは何か。
 藩の派閥争いの決着は。
 物語の進行とともにたくさんの人物が亡くなっていくが、まさにそれは散り椿の、散りざまの姿に似ている。

 何よりも主人公の新兵衛の造形が、いかにも葉室麟らしい。
 「生きてきた澱を身にまとい、複雑なものを抱えた中年の男」新兵衛であるが、亡き妻を今なお愛し、若い頃の仲間たちと共に生きようとする姿は、美しい。
 若い藤吾が次第に新兵衛に魅かれていくのもわかる気がする。
 そういう主人公の一途さは葉室麟の得意とするところだし、葉室作品の人気の根源でもある。
 この作品でも、それがよく生かされている。
  
(2015/01/31 投稿)

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