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06/26/2009    図書館に行こう
本 最近、ちょっと気になる新聞記事があったので、
 今日はそれについて書いてみたいと思います。
 6月20日付の朝日新聞の、「オピニオン」の頁です。
 記事のタイトルは「売れ筋ばかりの図書館はいらない」。
 ノンフィクション作家の佐野眞一さんのインタビュー記事です。
 その中で、佐野さんは「売れ筋本」ばかりを揃える図書館に苦言を呈しています。
 私も佐野さんの意見には全面的に賛成します。

本 例えば、湊かなえさんの『告白』という本が大変よく読まれているようですが、
 本当にその本を図書館が何冊も購入する必要があるかということです。
 図書館には読みたい人のニーズに応える必要がありますが、
 でもそれは特定の本を複数購入することとは別の次元だと思います。
 これは私たち予約をする側にも問題があります。
 先の湊かなえさんの本でいえば、何十冊も保有している図書館であっても、
 一年以上待たなければ貸し出しされない状態です。
 一年待ってそれでも読みたいという人はいいですが、
 旬の本はやはり旬なりの魅力があると思います。
 佐野眞一さんは「本が好きだ、読みたいという情熱と、図書館にリクエストして半年一年
 待ってもいいというのが、ぼくの中では結びつかない
」と話しています。
 そして、こうも話しています。ここは重要です。

   図書館は宇宙に例えられますよね。本は散らばった星ですよ。
   図書館での読書体験は、この星と星とをつないで星座を作ることだと思う。

本 図書館で何が一番楽しいかというと、
 未知の本に出会うことではないでしょうか。
 それは新刊に限ったことではありません。旧刊にもすぐれた本はたくさんあります。
 それでも予算のたくさんある大都市の図書館はまだめぐまれています。
 地方の図書館こそ限られた少ない予算で新しい本を購入しなければならない。
 いえ、多くは購入だってままなりません。
 私は大都市の図書館と地方都市の図書館の蔵書移動があっていいと思うのですが、
 費用負担の問題で難しいのかもしれません。

本 実はこの記事の隣が読書投稿のページで、
 この日「図書館満喫の退職生活」という投稿が偶然掲載されていました。
 その投稿には、
 「つましい年金生活を送る者にとって、図書館はぜいたくを満喫できる貴重な存在
 と書かれていましたが、売れ筋本ばかりではなく、
 そういう人にもっともっと本を楽しんで頂く工夫を、
 図書館側もしていかなければならないと思います。
 そして、私たち利用する側は売れている本だけでなく、
 知の森を歩く楽しみをもっと身につけて欲しいと思います。

本 今日の書評は、そういうことで、2003年の蔵出しですが、
 田中共子さんの『図書館へ行こう』という本にしました。

図書館へ行こう (岩波ジュニア新書)図書館へ行こう (岩波ジュニア新書)
(2003/01)
田中 共子

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sai.wingpen  精神の金庫                     矢印 bk1書評ページへ

 「私は十八歳のとき、大学受験に失敗し、浪人生活に入ったが、受験勉強そっちのけで、中之島図書館にかよってロシア文学とフランス文学に耽溺した」と、作家宮本輝は「精神の金庫」(『命の器』収録)という短文に書いている。
 多分その十何年か後、同じように大学受験に失敗した私も大阪の淀屋橋にある中之島図書館に友人と通うことになる。しかし、宮本氏のようにロシア文学が並ぶ書架の前で「全部読んでやる」と決意することもなく、読書室にいた女の子といつか付き合い始めた友人をうらやましく思いつつもそんな勇気もなく、やがてこの図書館に通わなくなった。
 そんな切ない思い出があるが、今は毎週一度は必ず行くくらい、図書館が好きだ。
 図書館の書架の間を、何の目的もなく、ただ本の背表紙を眺めながら、歩くのが好きだ。
 書架を見て歩く楽しみは、未知の本と偶然に出会える楽しみでもある。読む本はどうしても自分が好きなジャンルのものに偏りがちだが、こうして歩いていると意外な場所で意外な本と遭遇する。それは時に民俗学の棚であったり、哲学の一角だったりする。
 この本にも書かれているが、「読むジャンルが広がれば、図書館は何倍も楽しめ」(108頁)るのだ。

 でも、時々その圧倒的な本の量に目が眩むこともある。
 私はこの本の多くを読まずに死んでしまうだろうという、絶望感に呆然と立ち尽くす。
 しかし、考えてみれば、世界とは図書館にある本くらいに私にとっては果てしないものであり、私が知っている世界などわずか数冊の本に過ぎないのだ。
 図書館の書架に並ぶ本たちは、私にそのことを教えてくれているのだ。その度にそう思うようにしている。そういう意味でいうと、図書館は世界の縮図でもある。

 宮本輝は冒頭の短文の中で、さらにこう書いている。「あそこ(中之島図書館)、川のほとりの、鳩の糞にまみれた古い建物は、おびただしい精神の金庫だったなと思った。古今の名著、もはや手に入らぬ貴重な文献が、大切に保管されている巨大な金庫である」と。
 その精神の金庫を開けるヒントを、この本は教えてくれる。そういうことからすれば、この本は宝島の地図のような一冊だといえる。
  
(2003/02/09 投稿)


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