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プレゼント 書評こぼれ話

  今回紹介しました雨宮処凛(かりん)さんの『ロスジェネはこう生きてきた』は、
  今年創刊10年を迎えた「平凡社新書」の、
  新装となった新書の一冊です。
  本屋さんによく行く人ならもう気づいているでしょうが、
  「平凡社新書」のデザインがこれを機会に変わりました。
  そのあたりことが、平凡社のPR誌である「月刊百科」に書かれています。
  まずは、新書編集長の松井純さんの言葉です。
   
    創刊時の「自分を広げる、世界が変わる」という精神を受け継ぎながら、
    「いろいろだから面白い」を合言葉に、ジャンルを超え、さまざまな知の
    にぎわいに溢れた広場をつくっていきたいと思います。


  えらいな、編集長というのは云うことがちがいます。
  この「広場」ということですが、新書デザインを考えた菊池信義さんは、
  こんなことを書いています。

    編集部の人たちがつかみ取り、カッコ付きにして、シェイプアップした
    多種多様な知を読者にプレゼンテーションする場所、それが広場です。

  うまいな、デザイナーというのは云うことがちがいます。
  とりあえずは、創刊10周年おめでとうございます。
  これからも、頑張って下さい。平凡社新書
  
ロスジェネはこう生きてきた (平凡社新書 465)ロスジェネはこう生きてきた (平凡社新書 465)
(2009/05/16)
雨宮 処凛

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sai.wingpen  世代を越えて読んでもらいたい本               矢印 bk1書評ページへ

 1955年生まれの私にとっては衝撃的な本だった。
 あるいは、こう云い直してもいい。
 そこそこの会社で正社員として働いてきて、なんとか人生の中盤以降まで安穏と生きてきた者にとっては、深く考えさせられる本だった、と。
 ぜひ私よりも上の団塊の世代にも読んでもらいたい。あなたがたの子供たちは、これほどに傷つき、これほどに悩み、そして今「ロスジェネ」(ロストジェネレーションのこと)の名のもとに必死に生きようとしているのだということを、わかってもらいたい。
 「ロストジェネレーション」(ロスジェネ)について少し書いておく。もともとは「第一次世界大戦後に青年期を迎え、既成の価値感を拒否した作家たち」を指す言葉であったが、近年「バブル経済崩壊後の『失われた10年』に成人し、就職氷河期に世に出た」1970年代生まれの世代のことをいう。本書の著者雨宮処凛は1975年のまさに「ロスジェネ」世代である。
 この本は彼女の生い立ちから現代までの、中学時代のいじめ、「バンギャ」(バンドギャルの略)としての高校時代、リストカット、新右翼団体への参加と脱退、といった「生きづらい日常」を漂流する波乱に富んだ自身の過去をたどりながら、今を、そして明日を見据えている。

 特に衝撃的だったのは、中学時代の「いじめ」の経験だった。雨宮はその内容についてあまり詳しく書いていないが、「自分の中で自分をいじめられっ子と定義してしまうと、自分が崩壊してしまう気がした」(38頁)と記している。そのことの心理的負担が彼女をどんどん追い詰めていく過程がつらい。
 地域で「一番いい高校」にはいった雨宮にもしこの「生きづらさ」がなければ、彼女は「ワーキングプア」とは対極の地平にいたかもしれないと思えるだけに、それほどまでに人間を追い詰める「いじめ」というものの恐ろしさを感じる。

 本書で描かれた世界は「ワーキングプア」に代表される「貧困」な若者たちだ。
 しかし、と思う。
 たとえば、「カツマー」と呼ばれる経済評論家勝間和代を支持するものたちの多くもまた、「ロスジェネ」であるのだ。彼らはひたすら「勝ち続ける」ことをめざしている。
 この二極化は一体なんだろう。彼らが子供の頃に味わった「いじめ」と「被いじめ」の構造と同じではないのか。一方は「いじめれる」ことを怖れるあまり「いじめ」側に立とうとし、もう一方は「いじめられる」心の負担を解消できず落ちていく。その構造そのままが今に続いていないだろうか。

 この国が見誤ったことは「多様化する価値」の創出であり、その評価だと思う。
 ひとつの価値の座標軸(たとえばお金という座標軸)でものごとを理解しようとすると、どうしても二極化あるいは優劣ができてしまう。
 優は時に劣であり、劣もまた時に優である。
 そういう価値観を創出しないかぎり、この問題は解決しないように思う。

 「文章を書きながら、若者の痛みに常に心を寄せ、時にはアジり、実際に運動に参加する、というような生き方」(212頁)をめざす雨宮処凛からしばらく目が離さられない。
  
(2009/06/27 投稿)
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