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プレゼント 書評こぼれ話

  しばらく
  本のことを書かなかったので
  今日は
  直球ド真ん中の
  葉室麟さんの『山月庵茶会記』。
  やっぱりいい作品を読むと
  心が豊かになりますね。
  この作品、好きだな。
  葉室麟さんらしい
  静かな中にも
  熱情があって、いい。
  本を読む時間を
  しっかりとるようにはしているのですが、
  菜園に夢中になったり
  あれやこれやで
  困ってしまいます、
  読みたい本はたくさんあるのですが。
  梅雨にはいれば
  晴耕雨読で
  しっかり本が読めるかしら。

  じゃあ、読もう。



sai.wingpen  よき香りに包まれて                   

 葉室麟には直木賞を受賞した『蜩ノ記』の舞台となった豊後羽根藩のシリーズ以外に、豊後黒島藩を舞台としたシリーズがある。すでに『陽炎の門』、『紫匂う』と作品がある。
 本作もその黒島藩が舞台である。
 藩がシリーズの舞台となっているが、それぞれ単独で楽しめる。あるいは、将来大きな山となるのかもしれない。

 この作品では、かつて黒島藩の勘定奉行まで務め、将来を嘱望されながらも政争に敗れ、16年前に藩を捨てた柏木靫負(ゆきえ)が主人公となっている。
 政争に明け暮れていた最中に柏木の愛した妻藤尾は不義密通の噂を晴らすことのないまま自害して果てた。
 藩を出たあと、茶人として成功した柏木であったが、いまだに妻の死の謎を解くために、黒島藩に戻ってくる。
 何故、妻は不義密通の噂を否定もしなかったのか。それは真実であったのか。
 藩に戻った柏木は元の屋敷の別宅に小さな茶室をこしらえ、そこを「山月庵」と名づける。
 柏木はそこで当時の事情を知るであろう人物たちとの茶会を通して、16年前の謎に迫ろうとする。

 葉室の作品の魅力は女人の造型である。
 ひそかに男に想いを寄せる女人を描かせれば、葉室ほどの筆の人は怱々いない。
 この作品では柏木の養子息子の嫁千佳がそれにあたる。けれど、千佳は息子の嫁であり、千佳にとって柏木はどんなに想いがあっても義父である。
 実は、千佳の想いを借りて、亡き妻藤尾の想いが深いことを読者は知ることになる。
 物語の終盤、そんな藤尾の思いと柏木が向かい合う場面がある。
 柏木は言う。「茶を点てる心は、相手に生きて欲しいと願う心」だと。だからこそ、「茶を点てるおのれ自身も生きていよう」と。
 亡き藤尾が答える。「十六年の間、旦那様がお点てになる茶の中に生きておりました」と。
 男と女の思いが、小さな茶室の中で交差する。

 茶室の中での謎解きという趣向をこらし、単に謎解きに終わらない葉室の物語の作り方に感服するほかない。
 藤尾ではないが、「温かく、よき香りに包まれて幸せ」な、読書であった。
  
(2015/06/10 投稿)

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