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07/08/2009    1Q84 BOOK1:書評
プレゼント 書評こぼれ話

  さあ、お待たせしました。
  村上春樹さんの、7年ぶりの長編小説『1Q84』を紹介します。
  先日に6日には1、2巻合わせて200万部を突破したようです。
  読了感を先にいえば、物語としてとても面白い。
  1、2巻合わせて1000頁以上ある大作ですが、
  飽きさせない面白さがあります。
  読書としては、それで十分なのでしょうが、
  世の中の仕組みとして、どうしても深読みをしようとします。
  すでに多くの識者がその書評を、あらゆる方面から書いていますが、
  今月号の文芸誌もまさに村上春樹『1Q84』のオンパレードです。
  しかも、それが新潮社の「新潮」ではなく、
  講談社の「群像」であったり文藝春秋社の「文学界」であるのが、
  面白い。
  もちろんWebのオンライン書店でも多くの「書評家」たちが書いています。
  それなのに、今から書くのですからどうなることやら。
  書評タイトルの「ミステリアスな疑問符のプールの中に取り残されたままに」は
  「BOOK2」の中にでてくる文章を引用しています。
  明日は、今日の続きを掲載します。
  合わせてお読み頂けると、ありがたい。

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1Q84 BOOK 11Q84 BOOK 1
(2009/05/29)
村上 春樹

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sai.wingpen  「ミステリアスな疑問符のプールの中に取り残されたままに」その1   矢印 bk1書評ページへ

 1968年12月10日。東京都府中市はひどい雨だった。この日支給予定のボーナスのための現金を積んだ現金輸送車が追ってきた白バイ警官に停車を求められる。爆発物が仕掛けられているという警官の指示のもと、行員たちは現金輸送車から遠ざけられた。そして、偽の白バイ警官は現金輸送車ごと現金強奪に成功する。盗まれた現金、2億9434万1500円。いわゆる「三億円事件」である。
 現場には「ニセ白バイ」などの153点もの遺留品が残された。それにもかかわらず、犯人は捕まることなく1975年時効が成立する。
 村上春樹の『1Q84』は、たくさんのヒントがありながら真相にたどりつけない、そんな「三億円事件」によく似ている。
 誰にも「犯人」は見つけられない。
 「三億円事件」発生から11日後、一枚のモンタージュ写真が公開される。白いヘルメットをかぶった、どこか気の弱そうな青年。そして、その「犯人」をさがして、多くの有識者が事件の真相に迫ろうとする。元警視庁OB、犯罪心理学者、大学教授、そして、街の無数の名もなき「探偵」たち。
 村上春樹の『1Q84』もまったく同じだ。多くの有識者が物語の真相について語る。作家、評論家、大学教授、そして、ネットの無数の名前をもたない「読者」たち。
 しかし、誰にも「犯人」を見つけられない。

 「多すぎる疑問、少なすぎる回答。毎度のことだ」(「BOOK2」・386 頁)

 「三億円事件」はわずか3分間の出来事ながら、極めて物語をもった事件であった。
 白バイ警官が現金輸送車に近づき「爆弾が仕掛けられている」と行員たちを下車させる。警官が車体の下を調べる。ボンネットから噴出す白煙。逃げる行員。そして、走り去る現金輸送車。雨。雨。雨。まるで映画の一場面のように事件が進行する。
 村上春樹の『1Q84』も物語性の強い作品だ。文芸評論家の斎藤美奈子は「サービス満点の超娯楽大作」と評していた(朝日新聞)が、まったくその通りだと思う。先へ先へと導く強さはみごとというしかない。渋滞の首都高速から非常階段を伝わって別の世界へと入り込んでいく冒頭の場面からスリリングであり、映像的である。
 二人の主人公(「天吾」と「青豆(あおまめ)」)は、一人が作家志望の青年であり、一人がスポーツインストラクターの女性、というまったく違う世界にいる。天吾はカルト集団から抜け出した少女が書いた小説をリライトしていくなかで物語の核心に近づき、青豆は闇の殺人者として物語の核心に吸い寄せられていく。
 しかし、「三億円事件」がその物語から犯人を特定できなかったように、村上春樹の『1Q84』も真相は見えてこない。
 誰にも「犯人」は見つけられない。

 物語はつづく。謎は解けない。
  
(2009/07/08 投稿)

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