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07/09/2009    1Q84 BOOK2:書評
プレゼント 書評こぼれ話

  村上春樹さんの『1Q84』書評のつづきです。
  二つ連続していると思っていただいて構いません。
  そのような構成で書いたつもりです。
  もちろん一つひとつ単独でも大丈夫なようにもしています。
  今回の村上春樹さんの『1Q84』を読んで思ったのですが、
  チェーホフという作家がとても重要な役割で登場してきます。
  太宰治なんかもチェーホフにかなり影響されていますが、
  村上春樹さんもそうなのでしょうか。
  『1Q84』に出てくるチェーホフの『サハリン島』という作品は、
  本屋さんにも問い合わせが殺到しているようです。
  また、こんな表現も『1Q84』には出てきます。

    疑問が多すぎる。「小説家とは問題を解決する人間ではない。
    問題を提起する人間である」と言ったのはたしかチェーホフだ。
    なかなかの名言だ。
    (「BOOK1」472頁)

  後半にも出てきます。結構重要なところで何箇所も。
  ところで、今回の村上春樹さんの『1Q84』にはやはり厳しい反対意見も
  あるようですが、
  ざっとみたところでは八割方「よかった」票が多いような気がします。
  満足のいく作品でした。

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1Q84 BOOK 21Q84 BOOK 2
(2009/05/29)
村上 春樹

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sai.wingpen  「ミステリアスな疑問符のプールの中に取り残されたままに」その2      矢印 bk1書評ページへ

 「三億円事件」から1年後の1969年12月12日。某新聞が「容疑者浮上」の記事を掲載する。翌日には「犯人逮捕」と表現が変えられ、街は騒然とした。結果的にはこれは新聞史上に残る大誤報だったのだが、「三億円事件」は1年経っても話題性の高い事件であった。
 誰もが「謎」は解けると考えていたし、「犯人」は見つかると思っていた。
 村上春樹の『1Q84』の謎はとけるのか。作中の「リトル・ピープル」とは何か。「空気さなぎ」とは何を暗示しているのか。
 そもそも、題名の「Q」とは何を意味しているのか。
 「Q」の意味は上巻にあたる「BOOK1」の中盤あたりにこう示されている。
 「Qはquestion mark のQだ。疑問を背負ったもの」」(「BOOK1」 ・202頁)
 しかし、それだけなのだろうか。
 アルファベット26文字をよくみる。じっとみる。「Q」だけが不思議な形をしていることに誰もが気づくはずだ。ちょっど「O」に尻尾がはえた形をしている。そして、次の「R」もその尻尾をもっていることに不思議な感覚をもつ。もし、その尻尾がなくなれば、まるで同じ、二つの「O」と「P」が続くことになる。それは、この物語に何度も登場する「二つの月」と符合しないか。
 「Q」はそれほどに不思議な文字なのだが、やはりそれはありえるはずのない「犯人」だろうか。

 物語はひとつの闇に吸い寄せられるようにして、10歳の記憶のままに、主人公の二人を交差させていく。それを愛の物語と呼ぶのは容易だ。しかし、天吾は青豆がすでに何者でもないことに気づいている。
 「青豆をみつけよう、と天吾はあらためて心を定めた。何があろうと、そこがどのような世界であろうと、彼女がたとえ誰であろうと」(「BOOK2」 ・501頁)
 物語は、物語の中で完結することがない。

 戦後の歴史のなかで「三億円事件」が残した意味は大きいと思う。
 「謎」が解かれない限り、「犯人」が見つからない限り、私たちはあの事件に幾重にも物語を構築することができるという意味合いにおいて。
 そして、2009年夏刊行された村上春樹の『1Q84』も同じだ。
 「謎」が解かれない限り、「真相」が読み解かれない限り、私たちはこの物語に幾重にも神話を作りだすだろう。物語の中で、天吾がいつまでも青豆をさがしつづけるように。

 しかし、「犯人」は見つからない。
  
(2009/07/09 投稿)
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