プレゼント 書評こぼれ話

  昨日
  高校時代に太宰治に夢中になっていたと
  書きましたが
  今日紹介する桐野夏生さんの
  『抱く女』は
  1972年が舞台となっている
  長編小説です。
  1972年といえば
  私は17歳。
  もっとも多感な時期ですね。
  どうしても
  連合赤軍による浅間山荘事件を思い出しますが
  札幌オリンピックがあった年でも
  あります。
  フィギアスケートの
  ジャネット・リン選手が大人気となった
  冬季オリンピック。
  この時のテーマソングが
  トア・エ・モアが唄った
  「虹と雪のバラード」。

    ♪ 眠っている北の空に
     君の名を呼ぶ オリンピックと

  この歌は好きで
  今でも唄いますよ。
  そういう陽と影が
  いりまじっていた時代でした、
  1972年は。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  1972年                   

 これは各章のタイトルにあるように、1972年の9月から12月までの吉祥寺周辺に生きた若者たちの姿を三浦直子という女子大生を核に描いた長編小説だ。
 1972年といえば、2月に札幌オリンピックがあって日本中が沸き立った一方、連合赤軍によるあさま山荘事件が震撼とさせた年である。4月にはノーベル文学賞を受賞した川端康成がガス自殺、6月には佐藤栄作が退陣を発表、そのあとを「日本列島改造論」の田中角栄が引き継いだ。
 1951年生まれの著者桐野夏生はちょうどこの物語の主人公直子と同じ年の21歳。もちろんこれは創作だから、桐野が直子と同じはずはないが、時代の匂いをプンプンするのは、桐野にとってこの時代は、そして自身の20歳は、重要だということだろう。

 大学にも行かず吉祥寺の雀荘に入り浸る直子は数人の男と肉体関係を結んでいる。そこには恋愛感情は薄い。そのことで「公 衆便所」と影で揶揄されていることを知った直子は自暴自棄に陥る。
 「自分は、何でこんなどうしようもない時代を生きているんだろう」、と。
 そんな時代に現れた「中ピ連」という女性活動のグループの集会に顔を出しても、直子は自分の居場所が見つけられない。
 ちなみに、この小説のタイトル『抱く女』は、「抱かれる女から抱く女へ」というリブのスローガンから採られている。
 けれど、「抱く」ことが女性にとっての自立になるのか、直子はわかっていない。
 新宿で偶然出会ったジャズバンドの見習い深田との、おもちゃのような数週間の生活で、直子は愛のかけらを手にいれかかる。

 誰もがどうしようもなく、行き場所を求めていた時代だったんだと、この小説を読んでそう思う。
 この時代にはまだ大阪の郊外の高校生だったが、それから数年して出てきた東京にはまだこの小説の残り火があった。大学にはリンチを受け死亡した学生の写真が大きく貼られていたから、直子の次兄がそのような事件に巻き込まれるのもおかしくはない。
 けれど、私たちはあの時代をなんと見事にすり抜けたものだという思いが、いまある。
 直子という物語の主人公は、今、どんな世界を見ているのだろう。
  
(2015/09/03 投稿)

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