プレゼント 書評こぼれ話

  今日紹介する
  西村雄一郎さんの『清張映画にかけた男たち』は
  めちゃくちゃ面白いノンフィクションでした。
  西村雄一郎さんは
  1951年生まれで
  私が高校生の初めの頃
  映画雑誌「キネマ旬報」の映画評を投稿していた頃
  もうすっかり常連の投稿家だったように
  記憶しています。
  そんな西村雄一郎さんが
  映画「張込み」のロケ隊の
  旅館の息子だったとは。
  いやあ、驚きです。
  そういう映画と関係のあった人の映画評に
  私のような高校生の書く映画評が
  しのげるはずもありません。
  そういうことがわかっただけでもよかった。
  映画「張込み」は
  最近観ましたが、とっても面白い。

    

  高峰秀子さん演じるヒロインが
  とてもいい。
  それにしても松本清張
  もっと読まないといけないんでしょうね。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  映画みたいに面白い                   

 この本は映画評論ではありません。
 あえていうなら、昭和33年に封切られた、松本清張原作、橋本忍脚本、野村芳太郎監督、大木実、高峰秀子主演の、映画「張込み」制作の、ノンフィクション作品です。
 何しろ著者の、映画評論家西村雄一郎氏の実家は佐賀の老舗旅館松川屋で、この宿屋こそ主演の大木たちが撮影のために宿泊した宿屋だったのです。
 西村氏にとって、映画「張込み」の制作日記をたどることは、自身の子ども時代の日々をたどることでもあり、そういった人と人との交差が、この作品の魅力になっています。
 タイトルに「清張映画」とあるように、前半部分は映画「張込み」のドキュメント、後半は数多く作られた松本清張原作の映画をみていきます。
 その中には「清張映画」の代表作ともいえる「砂の器」(これも野村芳太郎監督)も当然はいっています。
 しかし、なんといっても前半の「張込み」制作のドキュメントの、なんという面白さ。なんというスリリングさ。それだけで、1篇の映画を観ているような気分になります。

 そもそも「張込み」は松本清張の短編小説で、それを2時間の映画に仕上げた橋本忍、野村芳太郎の才能はすごいものがあります。
 そのすごさは佐賀でのロケにも現れていて、野村芳太郎は松竹の本社からしばしばロケ中止の勧告を受けたといいます。それでも、野村は撮影をやめなかった。
 そのあたりがとてもミステリアスに描かれています。
 そして、透かし絵のように現れるのが日本映画の巨匠黒澤明です。
 野村は黒澤のような粘る演出を一度はしてみたいと念願していました。それが「張込み」の撮影につながっていきます。
 脚本を書いた橋本忍は黒澤明の作品を何本も書いています。
 橋本と野村をかつて引き合わせたのも、黒澤明でした。
 つまり、映画の観客人口はもっとも大きい時代に今でも残る名作となった「張込み」には、黒澤明の影がちらちらしているのです。

 このドキュメントが生き生きとし、しかも刺激的なのは、初めてのロケ隊に興奮した佐賀の普通の市民がいたからでしょう。
 人の渦が、この作品を熱くし、面白くさせています。
 実に熱い一冊です。
  
(2015/09/18 投稿)

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