プレゼント 書評こぼれ話

  今日から10月

    陽の匂ひして十月のほとけたち    児玉 輝代

  これからがまさに秋本番。
  こんな日は
  詩集でも開きたいもの。
  そこで今日は
  谷川俊太郎さんの詩集
  『あたしとあなた』を
  紹介します。
  「あたし」は女性かもしれないし
  男性かもしれない。
  「あなた」は男性かもしれないし
  女性かもしれない。
  詩人はそれを決めていません。
  決めるのは
  読者である「あたし」であり
  「あなた」なんです。
  秋の日に
  ベンチに座って詩集など開いてみませんか。

    秋の日の詩集に影のゆらめきて    夏の雨

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  漢方薬みたいな詩集                   

 今時どれだけの人が詩集を手にとるのだろうか。
 電子書籍で本を読む時代、それでも本という造形にこだわりつづけるとすれば、それは絵本ではないかと個人的には思っているのだが、そのわけは子どもたちが読むものとしてでなく触れて感じるものが大事と思いたいという一心だけだ。
 それは詩集でもそうなのだ。
 この詩集についている「特製しおり」の中で谷川俊太郎さんは「詩集は物としても質感が、他の本よりも大事だと思う」と記している。
 「読者の手に渡る一冊の詩集は、だから中身の詩作品を運ぶだけの単なるツールではなく、一個の工芸品だとも言える」。
 ここまで書かれると、電子書籍の出る幕はない。

 このわずか117ページの詩集は詩人谷川俊太郎さんの詩を楽しむだけではもったいない。
 せっかくだから、この詩集のためにブックデザインを担当した名久井直子さんが選んだ越前の抄紙機で作られた紙の手触りを堪能して欲しい。
 薄い水色の紙にうっすらと次のページの活字が浮かんでいる様は、谷川氏の詩の宇宙を彷徨っている感じがしないでもない。
 ページをめくる指先の感じ、全体を持つ重量感、それは羽毛のように軽いけれど、きっとそこに詩の深みがあるのだろう。
 こういう詩集を作れることは贅沢だし、そんなことができるのは谷川俊太郎さんだからかもしれないが、本の美しさを忘れてしまった人に手にとってもらいたし、これから本の世界にはいっていこうとする若い人には液晶画面ではない活字の魅力を知ってもらい たい。

 この詩集は「あたし」という一人称と「あなた」という二人称で書かれた詩が収められている。
 その最後に「詩集」と題された詩がある。きっと谷川さんはこの詩集全体の思いを最後の詩に込めたのかもしれない。
 その冒頭。「読んだ?/と/あたし  あと少し/と/あなた 詩が/からだに/溶けてゆく/漢方薬みたいに」とある。
 いい詩集は、「漢方薬みたいに」、きっと身体にいいのだ。いや、心にいいのかもしれない。
  
(2015/10/01 投稿)

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