プレゼント 書評こぼれ話

  今街にはシニアが溢れかえっています。
  若い人が仕事をしている時間、
  シニアの人たちは
  喫茶店で、図書館で、デパートで、公園で
  溢れかえっています。
  私もそんな中の一人ですが。
  見ていると
  女性の方が生き生きしています。
  男性はちょっと時間を持て余している感じ。
  これからはもっと
  そんな光景が増えていくのでしょうか。
  今日は
  内館牧子さんの『終わった人』を
  紹介します。
  自分が「終わった人」なんて
  誰も認めたくないでしょうが
  でも、「終わりつつある人」であることは
  間違いないんでしょうね。
  ちょっと深刻な
  長編小説でした。

  じゃあ、読もう。



sai.wingpen  身につまされました                   

 「定年って生前葬だな」。これがこの長い物語の書き出しである。しかも、タイトルが『終わった人』というのだから、内館牧子さんもキツイ。
 物語の主人公壮介は63歳でメガバンクから出向転籍していた社員30人の小さな会社を定年する。最終的な役職は専務取締役。 りっぱなものだ。
 けれど、壮介は東大法学部を卒業、かつてはメガバンクの役員候補までなった男だ。まだまだ仕事に未練がある。
 そんな男が定年になってあり余る時間をどうするか。まずは妻に「温泉にでも行こうか」と声をかけるが、中年になって理容師として自立した妻は「そんなに休めない」という。
 よくある。
 若い時には仕事を終えたら妻とのんびり旅行でもなんて男は考える。いつまでも考える。ところが、妻の方はすっかり忘れている。夫と一緒にいる時間を毛嫌いする。
 壮介の家にしても、理容師として妻が働いているからバランスがとれている。これが始終一緒なら息が詰まる。妻にいわれるのがオチだ。

 壮介は行き場もなくスポーツジムに通い出す。見たくもない映画を観る。カルチャースクールで啄木などを習い出す。ちょっと頑張って大学院でも行くか。
 けれど、それが壮介の定年後にしたかったことかといえば、違う。壮介は何の目的もなく「生前葬」を迎えたのだ。
 ところが、ひょんなことから壮介のIT会社の顧問の要請が来る。嬉々として受ける壮介。
 「俺が何よりも望んでいたのは、社会で必要とされ、仕事で戦うことだ」、定年からそれまでの時間を「地獄の日々」とまで言い切る壮介。
 わかる。実によくわかる。
 壮介でなくとも40年近く組織で働いていると、「仕事で戦う」ことが当たり前になっている。かつての夢なんかとっくに根腐れを起こしている。
 すっかり違う人格になっているのだ。それがわからないから「地獄の日々」になる。
 でも、なんだろう。働いている時にはあんなに辞めたいと思っていたはずなのに。

 さらに壮介はそのIT会社の社長にまでなってしまうのだが、最後は倒産。壮介の身勝手な欲望は老後資金まで失う結果にまでなってしまう。
 さあ、これで壮介は本当の「終わった人」になってしまうのか。
 身につまされる人たちは、たくさんいるだろう。
  
(2015/10/02 投稿)

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