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プレゼント 書評こぼれ話

  今回紹介した『大不況には本を読む』の著者、橋本治さんといえば
  今や大家ですが、
  私の年代でいえば、橋本治さんは『桃尻娘』の作者というイメージ。
  思えば、この「桃尻」というのはすごく刺激的でありながら、
  かわいいも併せ持った、美しい日本語? でした。
  もう少し年をくだれば、
  橋本治さんが東京大学時代につくったコピー、

    とめてくれるなおっかさん、背中の銀杏が泣いている
   男東大どこへ行く

  が有名かも。
  今から考えれば、そうやって橋本治さんが「東大どこへ行く」と
  心配していた頃(1968年)から、
  この日本という国はおかしくなっていたのかもしれませんね。
  この『大不況には本を読む』では1985年がターニングポイントとして
  書かれていますが。
  村上春樹さんの『1Q84』ではありませんが、
  どうもあのあたりはあやしいですね。
  書評にも書きましたが、
  こういう本こそ中高生に読んでもらいたい。

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大不況には本を読む (中公新書ラクレ)大不況には本を読む (中公新書ラクレ)
(2009/06)
橋本 治

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sai.wingpen  とめてくれるなおっかさん 私たち日本どこへ行く           矢印 bk1書評ページへ

 先日行われたラクイラ・サミットでの、この国の総理大臣の笑顔に違和感を覚えた。言葉にすれば、へらへらした笑顔。ああいうのを「追従笑い」というのだろう。どうせ「阿諛追従(あゆついしょう)」と書いてもわからないかもしれない。念のために書いておくと、「相手に気に入られようと、媚(こび)へつらうこと」の意である。
 だって、この国の総理大臣がどんなに近寄っても、オバマ大統領も議長国であったイタリアのベルルスコーニ首相も知らん顔していた。そういう集まりに出るのはつらいでしょう。
 「私は仲間だ」ということを、観衆にみてもらわないといけないのだから、ああいうへらへらした笑顔になる。しかし、観衆(国民)だって馬鹿じゃあないのだから、そういう笑顔をみれば、この国の立ち位置ぐらいはわかる。
 そんなことを思っていたら、この本の中で橋本治氏はこんなことを書いていた。「たとえば日本は、転校生です。日本のやって来たクラスには、成績上位の優等生グループがあって、その他は劣等生です。転校生の日本は、やがて勉強が出来るということが分かって「優等生グループの一人」になります。でもこれは、試験の成績によって「優等生の一人」とカウントされただけで、グループ内で友達付き合いのある優等生達の中に入って、日本は友達を作ることが出来ません」(25頁)。
 すごくよくわかる。友達を作れない日本は、どうしたら真の仲間になるのかを考えないで、へらへら笑いをするしかない。そして、私たちの国はずっとへらへら笑いをし続けてきたのかもしれない。

 「この本は「大不況の最中に本を読んで、景気を回復させよう」という種類のものではない」(186頁)のだが、実はそのほとんどが「経済の話ばっかり」なのである。
 少なくとも前振りでは、出版のあり方は景気の動向に左右されない「人のあり方」と説明されているにもかかわらず、である。
 ただ、誤解をしてもらいたくないので、橋本氏の言葉を引用すると、「「本を読むことの徳」ばかりを説いていたら、それはただの精神訓話で、「それでいいんじゃないの?」にしていたから、本というものは外状況から取り残された」(142 頁)わけで、この不況とはどういうものなのか、あるいは不況を抜け出た先にどのような未来が待っているのかを考えることは、出版であっても避けて通れない。
 少なくとも「人のあり方」を問うことをどこかにうっちゃった本にあっては、真剣にそのことを考えないかぎり、未来はない。

 橋本氏が提示する答えはここでは書かない。読者一人ひとりが自身で答えを出すしかない。
 私たちのこの国が大きく変わりうるかもしれないこの夏に、ぜひ若い人にも読んでもらいたい一冊である。
  
(2009/07/17 投稿)
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