プレゼント 書評こぼれ話

  先日
  映画『岸辺の旅』を観てきました。
  この作品で黒沢清監督は
  第68回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で日本人初の「監督賞」を受賞して
  今話題の映画です。
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  主人公の瑞希を深津絵里さん、
  優介を浅野忠信さんが演じています。
  深津絵里さんの演技の素晴らしいこと。
  この作品で今年の女優賞を狙えるのではないでしょうか。
  ほかにも小松政夫の演技が光っていました。
  大人のラブストーリーというふれこみですが
  もっと深い作品に仕上がっていたような気がします。
  映画のあと
  どうしても原作が読みたくなって
  一日で読み切りました。
  今日紹介するのが、それ。
  湯本香樹実さんの『岸辺の旅』。
  どちらかよかったかというと
  映画もよかったけれど
  原作はそれ以上によかったというのが
  私の感想です。
  映画を観た人には
  ぜひこの作品を読んでもらいたい。

  じゃあ、読もう。



sai.wingpen  映画もいいけど、原作はもっといい                   

 黒沢清監督の手で映画化され、第68回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門の「監督賞」を受賞した話題の映画の原作である。
 単行本にして200頁あまりの作品をおよそ2時間の映画にするわけであるから、原作と映画の違いはある程度やむをえない。
 原作にはないエピソードがあったり、原作にあるエピソードをカットしたり、それはそれで仕方がない。ただ原作がもっている、つまりは作者湯本香樹実(かずみ)の世界観と映画監督黒沢清の世界観がやや違うような気がする。
 湯本の方が生きる側の視点にあるような気がするのだが、どうだろう。

 夫・優介が失踪してから3年、ある日妻・瑞希のもとに優介が帰ってくる。しかし、彼はすでに死んでいるのだという。
 つまり、優介は死者なのだ。
 その彼が「でかける」という。訳のわからない瑞希は「どこへ」と訊ねる。それは優介が肉体を喪い、瑞希のもとにたどりついた道をさかのぼる旅の誘いである。
 その旅で出会った人たちと町。そして、優介のこと。
 優介がいなくなってから、瑞希はずっと優介をたずねる旅をしていたのかもしれない。
 愛する人はただそばにいるだけではだめなのかもしれない。愛の名のもとに本当のその人を知ることを拒んでいる。知ってしまえば、愛は消え失せてしまう。
 瑞希は優介がいなくなることで彼を知ることになる。

 映画には描かれなかった挿話がある。
 それは瑞希が子どもの頃に川に落されて溺れた体験をもっているという挿話だ。なんとか一命をとりとめて瑞希は若くして亡くなった父から「生き運がある」と言われたことがある。
 映画化の際にどうしてこの挿話が割愛されたのかわからないが、水につならるものとして、この挿話は欠かせないような気がする。
 特に作品名に捉われる訳ではないが、この作品には水の流れやせせらぎの音が欠かせないような気がする。
 人の一生は河の流れに例えられることがあるが、人を愛するとか人を喪うことも、どこか川の流れに似てはいないか。

 映画を観た人はぜひ原作を読んでもらいたいし、原作を読んだ人は映画を観てもらいたい。
 そんな作品だ。
  
(2015/10/20 投稿)

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