プレゼント 書評こぼれ話

  正直に書くと
  最近の葉室麟さんの出版ペースは
  尋常ではない。
  次から次へと新しい単行本が出るし
  既刊本は文庫にと
  なっていく。
  葉室麟さんを読むだけで
  一年が過ぎていくのではあるまいか
  そう思ってしまう。
  読む側がそうなのだから
  書く葉室麟さんは息つくひまもないのではないか。
  そのせいか、
  ここ何作は作品の出来としてはいまひとつの感があったが
  今日紹介する
  『鬼神が如く』はまるで出来が違う。
  きっと葉室麟さんも
  この作品にかける意気込みが
  ちがったのであろう。
  読書の秋にふさわしい
  重厚さと質の高さ。
  おいしい珈琲とゆったりとした時間で
  味わいたい名品である。

  じゃあ、読もう。



sai.wingpen  葉室麟の新たな世界                   

 昨年(2014年)のNHK大河ドラマ「軍師官兵衛」を見た人ならご存知だろうが、戦国時代の智将黒田官兵衛を支えた家臣の一人に栗山利安がいる。善助と呼ばれていた人物である。
 善助の子供がこの長編小説の主人公栗山大膳である。善助は官兵衛(如水)の死後、その子長政にも仕え、黒田家にとっては欠かせない重鎮の人であった。
 大膳もまたそのように育った。しかし、長政の子である忠之とはソリが合わなかったようで、忠之に謀反のおそれありと時の幕府に進言。それによって大膳は盛岡藩預かりとなるほどの騒動となった。三代将軍家光の時代である。
 このことはのちに「黒田騒動」として歌舞伎の演目になったり森鷗外が作品として残したほど人々に印象を残した。
 その題材を葉室麟が実に重厚に描き出したのが、本作である。

 北九州小倉生まれの葉室麟は「地方の視点から歴史を描く」ということをこれまでも一貫としてきたが、この題材などはおそらく長年温めてきたものに相違ない。
 デビューが遅かった葉室麟は書きたいものがたくさんあるからと直木賞受賞後も精力的に執筆活動をしているが、この作品の体温は極めて高いことを見ると、「黒田騒動」に対する思いの強さを感じる。
 しかし、これが歴史小説かといえば、それは違うかもしれない。「黒田騒動」という史実にのっとりながら、栗山大膳に葉室麟がこれまでにさまざま描いてきた男のいきざまを見ることができる。

 どこまでは史実における解釈なのか「黒田騒動」の全体像を知らないのでなんともいえないが、大膳を危機から守る杖術使いの卓馬と舞という兄妹は葉室麟の創作だろう。
 この二人がいて、彼らに自身の思いを投影することで大膳の姿が明確になっている。
 時代をたどる補助線のような役目をこの兄妹が担っている。
 それだけではなく、彼らの杖術の活躍の場はエンタテインメントとしての見せ場である。葉室は時代小説の面白さを心得ている。
 おそらくこの作品は葉室麟の作品の中にあっても重要な位置をしめる作品になることは間違いない。
 「鬼神の如く」とは、この作品に取り組む葉室麟の姿そのものだ
  
(2015/10/30 投稿)

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