プレゼント 書評こぼれ話

  東日本大震災から4年8ヶ月。

  先日サラ・ガーランドさんの
  『エディのやさいばたけ』を紹介した際に
  再読だということを
  すっかり忘れていました。
  最初に読んだのが2011年8月。
  それから4年。
  人の記憶というものは
  なんともあやういものです。
  あの東日本大震災からも
  同じだけの月日が経っています。
  あの日のことを忘れまいと思いつつも
  実際には多くのことを忘れてしまっているのかも
  しれません。
  先日の絵本に
  そんなことを思い知らされました。
  今日は再録書評です。
  相川祐里奈さんの『避難弱者』。
  2013年10月に読みました。
  もし読んだことがないという人は
  ぜひ手にとってみて下さい。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  涙はまだかわいていない                   

  まずはじめに、きちんと書いておくと、本書はノンフィクション作品としてとてもよく書けていて、東日本大震災の際の福島原発事故によって厳しい避難を強いられたさまざまな老人ホームの姿を描いた内容という重いテーマであるにもかかわらず、読書の時を豊かにさせてくれる作品であった。
 おそらくそれは丁寧な取材と著者のゆるぎない思い、そして何よりもあの日とそれにつづく困難な時間を生きた人々の熱い気持ちから生まれたものだろう。
 ひとつの作品ができるまでの、それは美しいハーモニーだ。

 津波にのみこまれていく家々や車、そして人々。灯りの消えた道を歩く帰宅難民。原発周辺の現れた白い防護服に身をつつんだ人々。
 とてつもない被害。数えきれない悲しみ。
 あの日、2011年3月11日の東日本大震災とそれに続く福島原発事故。
 あの日から私たちは多くの悲しみや終わらない原発問題の多くのことを目にし、耳にしてきたはずだが、まだまだ気がついていないことはたくさんある。
 2012年3月に設置された「東京電力福島原子力発電所事故調査委員会」、いわゆる「国会事故調」に参加し、その組織が解散後、「福島原発事故はまだ終わっていない」とフリージャーナリストの道を歩き始めた著者は、「福島の人たちの想いを風化させず、教訓として広く伝えていきたい」と、老人ホームというほとんどおきざりになった「弱者」たちがどのようにあの日とそれにつづく避難生活を送ったかをまとめたのが、この作品である。

 高齢者とともに食事もままならぬ日々を過ごした看護者だけでなく、やはりそこから脱落していく人たちの苦悩もきちんと描かれていて、強い人だけではない、弱い人(というのも適切ではないが)の立場にも理解をしめしている。
 自身の妊娠で、あるいは家族のため、現場を去らなければならなかった人たちもどんなに悲しかっただろう。
 高齢者という「弱者」だけでなく、そのことにかかわる多くの人にこれだけの心的負担を強いたものの本当の姿を、私たちはまだまだ知らないといけない。
 涙はまだかわいていないのだから。
  
(2013/10/11 投稿)

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