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07/20/2009    猫のつもりが虎:書評
プレゼント 書評こぼれ話

  文庫本が好きです。
  あの大きさがいい。
  手のひらサイズというんでしょうか、何より持ち運びに便利なのがうれしい。
  二、三冊ぐらいならどうということはない。
  価格もいい。
  最近はそれでも高くはなっているが、単行本と比べるとまだ安い。
  そして、何よりも新刊本で読んで、
  もう一度文庫本で出版されると、
  懐かしい人に出会ったようで、ほろりとさせられる。
  お前、元気にしてたのか、と抱きしめたくなる。
  この頃は単行本から文庫本になるスピードも早くなっているが、
  今回紹介した丸谷才一さんの『猫のつもりが虎』のように、
  単行本の刊行が2004年だから、5年ぶりに文庫化されるものもある。
  文春文庫の今月の新刊として、この本を見つけた時は
  本当にうれしかったです。
  もともと文庫本をもたないマガジンハウスという出版社からの刊行でしたから、
  こうして文庫本で出版してくれた文春文庫さんに
  お礼をいいたくなる。
  ということで、今日は文庫本刊行記念として
  2004年の刊行の時に書いた書評の蔵出しです。
  私としては、結構お気に入りの書評です。

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猫のつもりが虎 (文春文庫)猫のつもりが虎 (文春文庫)
(2009/07/10)
丸谷 才一

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sai.wingpen  おとなの絵本                 矢印 bk1書評ページへ

 大人だって絵本を読む。その中でもっともたくさん絵本を読むのは多分幼い子供を育てている大人ということになるだろうが、そういう基本的な接し方を経て、絵本というものを見直したという人はかなりいるにちがいない。
 絵本をあらためて読んでみると、その豊かな時間の流れに気がつく。息の詰まるような時間から、しばし解放されるのがわかる。細かい文字や数字で頁を埋められた本が月曜日から金曜日だとすれば、絵本は休日みたいなものだ。
 そこに流れている時間がゆったりとしている。豊饒である。
 丸谷才一氏の、おなじみの雑学本の新刊は絵本のような本である。
 書かれているのはいつもの如く、「ベルトの研究」だったり「男のスカート」の話だったり、おそらくどうでもいいような薀蓄話なのだが、読んでいる時間そのものが悠久の時を感じさせてくれる。
 どうでもいいようなことを、真剣に考察することの贅沢は、時間を豪奢に使う余裕みたいなものだ。答えなど焦ってだすことはない。ゆっくりと時間をかけて、楽しみながら、仮想しながら、解いてみようよ。 丸谷氏ならではの、思考方法である。

 そして、この本は和田誠氏の絵でも楽しめるから、余計に絵本のような印象を受ける。この本の中に、和田氏の絵(しかもこの本では色刷りなのが嬉しい)が35枚もはいっている。実に24%近い構成である。
 和田氏の絵を見ているだけで、楽しくなるのだから、この本は絵本そのものといえる。
 私の好みでいえば、「ガルボ伝説」と題された丸谷氏の小文につけられた絵や「夜中の喝采」という短文に挟み込まれた芥川龍之介の絵がいい。数分見ていても、何度見ても、飽きることはない。

 そう、おとなだって絵本は読む。まして文章が丸谷才一氏で、絵が和田誠氏であれば、こんな贅沢な絵本はない。
 そして、できればキリッと冷えたビールがあればいうことはない。
 おとなって、ささやかな優雅を求めるものなのだ。
  
(2004/07/18 投稿)

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