プレゼント 書評こぼれ話

  今日は桜木紫乃さんの
  『霧 ウラル』という作品を
  紹介します。
  「ウラル」とあるのは
  アイヌ語の「霧」の読み方。
  これでおわかりのように
  今回も舞台は
  桜木紫乃さんの得意とする
  北海道。
  但し、うんと東にいって
  根室が舞台となっています。
  書評にも書きましたが
  桜木紫乃さんはうま過ぎます。
  女もいいけれど
  男の描き方もいい。
  どこかに闇を抱えた男って
  女にもてそうですものね。
  そんな男女の葛藤を
  お楽しみあれ。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  うま過ぎる桜木紫乃                   

 桜木紫乃が『ホテルローヤル』で第149回直木賞を受賞した際、ほとんどの選考委員が桜木の巧さを絶賛していた。
 中で、宮城谷昌光委員が「桜木氏はすぐれた料理人のようなもので、どこにでもある材料で旨い料理をつくりあげてしまう」、桐野夏生委員が「若干気になったのは、うま過ぎること。よく滑って引っかかりがない」と選評していたのが、印象に残っている。
 昭和35年から昭和41年頃の北海道根室の光と闇の世界を描いた、この長編小説を読み終えて、題材がけっして「どこにでもある材料」とは思わないものの、桐野が指摘した「よく滑って引っかかりがない」という印象は残った。
 つまり、桜木はあまりにも「うま過ぎる」のだろう。

 根室の裕福な河之辺家の三人姉妹の次女と生まれながら、そういう環境が馴染めず花街の芸者になった珠生。彼女をひきつけてやまない相羽は根室の街の闇を背負った男。やがて、珠生と相羽は世帯をもつようになる。
 光は闇があって、その力を増すものだ。相羽という闇を利用して政界にうってでようという大旗家に嫁いだ珠生の姉智鶴は三人姉妹の中でもっともおとなしく見えていたが、次第に光の部分を背負うようになっていく。光が闇を利用する。
 家を飛び出した珠生ではあったが、実はもっともおとなしく親のいいなりに結婚した智鶴の手の中に踊らされていることがわかっていく。
 智鶴は相羽に女まであてがっているのだ。
 三女の早苗は家を出た姉たちの身代わりに河之辺家を継ぐことになるが、裏では相羽の弟分の若者にひかれていく。
 三人姉妹はそれぞれに闇を抱え込んでいる。
 もっとも闇が深そうにみえた珠生が他の誰よりも純に見えてしまう。
 それほどに智鶴も早苗も心の闇は深い。そしてそのことが終盤、珠生に不幸をもたらすのだ。

 おそらくこの題材はとても難しいと思う。
 戦後まもない、しかも領土問題を目の当たりにしている土地での男たちの世界。それに翻弄される女たち。
 しかし、桜木は智鶴という造形を生みだすことで、翻弄されているのが男たちであることを見抜いている。それは単純なことのようでありながら、実に巧みに「霧」に包ませてしまうのは、桜木の手腕だろう。
  
(2015/12/08 投稿)

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