プレゼント 書評こぼれ話

  昨日のこぼれ話で
  読みたい症候群の話を書きましたが
  今日もその続きのような話から。
  部屋の本棚を見て
  ときどき思うのですが
  ここにある本を私は再読することがあるのだろうかって。
  毎年8万冊近い本が
  新しく出版されていて
  もちろんその全部なんて到底読むことはできないし
  私が生まれる前には
  うんとたくさんの本があって
  なんだか本とおいかっけしているみたい。
  尻尾さえ
  ちっともつかまえられないけれど。
  だから、時には
  昔読んだ本も再読しないと思っているのですが。
  そこで今日は
  村上春樹さんの『風の歌を聴け』を
  再読したので
  紹介します。
  再読というかもう何度か読んでいる作品です。
  あまりに久しぶりだから
  新しい本を読んでいる感じでした。
  講談社文庫佐々木マキさんの表紙絵は
  いつ見てもいいですね。
  きっとこの絵が
  この作品のすべてを語っているような
  気がします。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  あれからどれだけ風が吹いただろう                   

 いまさら言うまでもないだろうが、村上春樹の記念すべきデビュー作だ。
 昭和54年(1979年)の第22回群像新人賞を受賞し、第81回芥川賞の候補作にはなったものの受賞には至らなかった作品である。
 当時の芥川賞選考委員は開高健や大江健三郎、吉行淳之介、遠藤周作、丸谷才一となんとも贅沢な10名だったが、多くの選考委員は無視か柔らかな評価となっている。
 丸谷才一の「作品の柄がわりあひ大きい」、遠藤周作の「憎いほど計算した小説」が目立つ程度である。
 その後の村上春樹の活躍から何故芥川賞をとれなかったということになるのだろうが、むしろこの作品が群像新人賞を受賞したことの方が驚きともいえる。もし、この作品が新人賞を受賞しなければ、村上春樹は作家となっていたかどうか。
 そういう点では文芸誌「群像」の果たした意味は大きい。

 この中編小説は1970年の8月の18日間の物語だ。
 海辺の街で「僕」が「鼠」と呼ばれる友人とビールを飲み、女の子のことについて話し、四本指の女の子と偶然知り合って、またビールを飲んだ、そんな18日間の話だ。
 「僕」が今までつきあった3人の女の子の思い出は思い出の領域でとどまり、深い物語にはならない。まるで風のような。
 それでも、文章が持っている気分が好きだったし、何十年ぶりかで読み返してみると、思った以上に時代めいて感じたけれど、初めて読んだ時の気分はそのままだった。
 それは、翻訳調の文体から醸し出されるものなのかもしれないが、きっと村上春樹が根っこで持っているセンスのようなものだと思う。
 どんなセンスって聞かれると答えようがないけれど。

 今読んでも新鮮な小説だが、初めて読んだ時はもっとちがっていたような気がする。
 これからこの物語を読もうとしている読者はどうなのだろう。当然有名になった村上春樹のデビュー作としてページを開くのだろうが、私はそうではなかった。
 だからといって若い読者の読み方がつまらないなんてことはない。ただ、初めてハンバーガーを食べた気分ってわからないような、そんなことだと思う。
  
(2015/12/19 投稿)

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