プレゼント 書評こぼれ話

  先週マンガの記事が続いたので
  今週はぐっと大人向きの
  官能小説を紹介します。
  おなじみ
  花房観音さんの『時代まつり』。
  デビューから
  作品を読み続けている
  私にとっては稀有な作家。
  花房観音さんのどこがいいかと訊かれたら
  やはり舞台となる京都のことが
  うまく描かれているということを
  挙げていい。
  京都にはどこか淫靡な感じがあるというのは
  まったく気分なのですが、
  そのあたりは花房観音さんと
  よく似ている。
  京都をそういう目で見ると
  観光雑誌にはない
  奥深さを感じます。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  花房観音宣言                   

 光文社文庫オリジナルの官能短編集ではあるが、収録されている6つの作品は2014年から2015年にかけて「小説宝石」と「特選小説」に掲載されていたものだ。
 京都を舞台にして「まつり」を題材にした物語は、表題作である「時代まつり」のほか「かにかくにまつり」「七夕まつり」「義士まつり」「節分まつり」「あじさいまつり」と、さすがに「まつり」の多い京都だけのことはある。
 その「まつり」と男と女の官能を花房観音は巧みに作品に仕上げている。

 この文庫には作品よりもこれだけは読んでもらいたい、著者による「あとがき」がついている。
 花房観音の生の声がここにはあって、観音ファンとしてはうれしいかぎりだ。
 自身は京都生まれではないという書き出しから、京都のこと、「まつり」のこと、官能のことなどが実に素直に書かれている。
 その中で、「まつり」は男女の営みに似ていると綴った箇所がある。
 非日常である「まつり」の高揚感、そして終わったあとの寂寥感が、セックスと同じだと、観音はいう。
 セックスをすることで知らなくてもいいものを知ったりすることもよくあるという観音の言葉の通り、この6篇の官能小説もそういう骨組みになっている。

 しかし、そういう寂寥感は官能小説に必要ないと、観音は言い切る。
 「実用的な」官能小説には余計だと。
 だから、自身は官能作家に向いていないのだと。
 これは官能小説を否定しているのではない。観音は単なる「実用的な」官能小説を書いているのではないということだ。
 セックスがおわったあとの、それは汗であったりぬめりであったり匂いかもしれない。いや、男と女の決して交わることのない鼓動といってもいい。それこそが、花房観音の世界だ。

 そのあとで「京おんな」について、それこそ女そのものと書いている。
 「どんなに強く抱きしめても」「気がつけばするりと男の腕をすり抜け」る、女たち。
 「そんな女になれないから、京都の人間ではないからこそ、私はこれからも京都という街と「京おんな」を書き続けていくだろう」。
 これは、花房観音自身による花房観音宣言だ。
 この「あとがき」を読むだけでも、この文庫本は価値ある一冊だ。
  
(2016/01/19 投稿)

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