プレゼント 書評こぼれ話

  東日本大震災から4年11ヶ月。

  今日は建国記念日

    むらさきの山河建国記念の日     井上 弘美

  しかし、
  5年近い前、私たちは
  そんな山河を失いかけたのです。
  大きな津波と
  原発事故。
  きれいな海岸線は大きく崩れ、
  美しい山河に見えない放射能が
  流れ込みました。
  東北の人たちは
  故郷を喪い、
  あるいは故郷を追われました。
  あれからもうすぐ5年。
  美しい山河は戻ったでしょうか。
  福島には
  まだ故郷に帰れない人たちが
  たくさんいます。
  今日は
  あの日津波に大きな被害を受けながら
  紙をつなぐという責務から
  地道に努力していった人々を描いた
  佐々涼子さんの『紙つなげ!彼らが本の紙を造っている』を
  紹介します。
  紙をつなぐということは
  絆を結ぶことでもあったと思います。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  彼らがいたから本が読めた                   

 東日本大震災から5年が経とうとしている。
 あの日のことをどれだけ記憶しているだろう。
 被災地だけではない。この国全体があの日から節電に努めたはずが、今では煌々と灯りをともす震災前の状態に戻っている。
 いつの間にか震災以前の生活に戻っている。それを復興というのであろうか。
 「人は簡単に環境に順応する。ひとたび緩んでしまえば、震災前と同じだ」、東日本大震災で致命的な損害をえた日本製紙石巻工場の再生の姿を描いたこの作品の中の一節だ。
 元に戻ってしまうことは悪いことではない。
 しかし、あの日のことを忘れてはいけない。忘れそうになった時、もう一度あの日に戻る、あの日に続く日を思い出す。
 震災を記録した本は、だからいつまでも読む価値がある。読む理由がある。

 紙の本か電子書籍か。出版業界はここ数年いつもこの二者択一に揺れている。
 その時、本が成立する紙のことを忘れてはいないか。
 「読書では、ページをめくる指先が物語にリズムを与える。人は指先でも読書を味わっている」と書かれて、はっと気づかされる。
 本はそのコンテンツだけでなく、紙の質感なくして成立しないということに。
 東日本大震災の時、その紙の供給が覚束なくなったという。
 日本製紙石巻工場が津波で大打撃を受けた。
 瓦礫が工場内に押し寄せ、マシーンは泥水に沈んだ。
 工場で働く人たちの中にも犠牲者はいた。それでも、出版の灯を消すわけにはいかない。
 わずか半年でマシーンを稼働させるという、誰もが無理だと思った目標に向けて、彼ら石巻工場の人たちは前を向いた。

 震災の起こったあの日の行動からマシーンの再稼働までを丁寧に追跡したノンフィクション。
 この本の中には美談のように語られた被災者の人たちの冷静さだけでなく、被災した町を強奪する人たちがいたこともきちんと描かれている。
 美談だけでは正しい記録といえない。あの日とあの日につづく日々を、人々はどう生き、行動したのかを正しく伝えることが大切だ。
 被災地だけではない。東京だって同じだ。この国全体がそうだ。
 一冊の本が伝えることはわずかなことかもしれない。それでも、それすら伝えきれなければもっと悲惨だ。
 紙をつないだ彼らの意味は大きい。
  
(2016/02/11 投稿)

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