プレゼント 書評こぼれ話

  今日紹介するのは
  村上春樹さんの最初の短編集
  『中国行きのスロウ・ボート』。
  何度この短編集を読んだだろう。
  私の手元にある中公文庫
  昭和61年発行になっている。
  ちょうど30年前だ。
  私の人生の半分、か。
  昨日日本経済新聞朝刊コラムの「春秋」がいいという話を
  書きましたが、
  昨年の12月26日の「春秋」に
  この『中国行きのスロウ・ボート』の話が
  取り上げられています。
  ちょうど日韓で慰安婦問題が協議されていた頃です。
  「春秋」にはこうある。
  長いですが、引用します。

    ▶(村上春樹さんの)エルサレム賞受賞時のスピーチにあった。
    そこでは、前年に亡くなった父親が20代で徴兵され、中国でも
    戦闘に参加したことが明かされる。村上さんが子供のころ、
    父親は毎朝仏壇の前で、敵味方の区別なく、死んだ人々のため祈った。
    その場に漂った死の気配は父親から引き継いだ大事なものだ、と話す。
    ▶個人と歴史が深く関わり合う場をリアルに感じ取った村上さんは、
    自らの思いを作品に昇華させた。

  短編「中国行きのスロウ・ボート」に漂う
  死の気配の意味が解けたように感じました。

  じゃあ、読もう。


sai.wingpen  初めてこの本を読んだのはいつだったろう                   

 よくある質問に、「好きな本」とか「印象に残った本」と訊かれる。
 よく似たことが映画でもある。
 こういうのは自分の人となりを理解する基本的質問だから、答えは用意しておいて損はない。できれば、その理由も。
 村上春樹さんの作品から一つ選ぶとすれば、私はこの『中国行きのスロウ・ボート』をあげたい。しかも、少し指定があって、中公文庫の同作である。
 何故なら、安西水丸さんのカバー絵がいい。これだけで30点はプラス。
 次に、裏表紙の作品紹介がいい。これはあまたの文庫本の中でも傑作だ。これにも30点。
 そして、村上春樹さんの初めての、しかも上出来の短編集に40点。
 これで、満点だ。

 ここには7篇の短編小説が収められている。
 表題作の「中国行きのスロウ・ボート」は感傷的過ぎるかもしれないが、そのあたりは読者の好みもあるだろう。私は好きだ。
 ここには主人公の「僕」が出会った三人の中国人、この作品が書かれた1980年代より今はうんと中国人と接する機会は多いが、が描かれている。どうしてか、私には死の匂いがするし、2人めの学生時代に出会った中国人の女子大生との思い出はあまりにも切なくて、恋愛小説としてもとてもよく出来ている。こういう心のすれちがいのような恋愛を初期の村上春樹はうまく描いていたような気がする。
 感傷的過ぎるといえば、そのラスト。
 「友よ、友よ、中国はあまりに遠い。」は今ならどう書くだろう。私は好きだが。

 その次に好きなのが、「午後の最後の芝生」。芝生刈りのバイトをしている「僕」がバイト最後の日に訪れた家。そこで出会った大柄な奥さん。そして、存在しない彼女の娘。
 この作品に登場しない娘も、「中国行きのスロウ・ボート」に出てくる女子大生と同系統にあるような気がする。そこにいながらも、そこにはいない。
 それは矛盾しているようだが、わかる。
 結局は理屈ではなく、情感で納得している。

 「好きな本」というのも、理屈ではないのかもしれない。
 人との出会いがそうであるように、一瞬の間合いが印象を残す。
  
(2016/02/02 投稿)

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