プレゼント 書評こぼれ話

  学生時代に流行った
  イルカの「なごり雪」。

    汽車を待つ君の横で僕は時計を気にしてる
      季節はずれの雪が降ってる

  という、名曲。
  この「なごり雪」とは
  どんな雪なのかで友人と議論になったことがある。
  友人は雪国を通ってきた汽車に降り積もっている雪のことだといい、
  私は季節はずれに降る雪だという。
  たわいもない議論だが
  青春の議論とはそんなものだ。
  では、
  葉室麟さんの『はだれ雪』とは
  どんな雪なのか。

    はだれ雪は、はらはらと降る雪だとも
    とけ残り、まだらになった雪だともいう。

  皆さんはどちらだと思います?
  この長編小説は
  忠臣蔵を題材にしていますが
  そういえば討ち入りも雪の夜でした。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  これぞ正当派時代小説                   

 元禄15年12月14日に起こった赤穂浪士47人による吉良上野介討ち入りほど、日本人に愛される事件はない。何度となく小説に描かれ、映画化テレビドラマ化され、それでもまだ飽くことを知らない。
 赤穂浪士の討ち入りが日本人に愛されるのは、主君の仇をどううつのかといったサスペンスの要素を持ちながら人情話や恋愛の要素もはいってくるエンタテイメント色が強いからだろう。
 葉室麟によるこの作品も赤穂浪士による討ち入りを題材としつつ、人として生きるには、愛する者を守るにはを描いた、正統派時代小説である。
 どこまでが史実でどこからが創作なのか知らなくとも、十分に楽しめる娯楽小説といってもいい。

 討ち入りより一年前の元禄14年3月14日、江戸城松之廊下にて赤穂藩藩主浅野内匠頭長矩による刃傷事件が起こる。これにより、浅野内匠頭は切腹を命じられた。この時、浅野の最後の言葉を聞き取った一人の男がいた。
 この物語の主人公永井勘解由(かげゆ)である。
 このことで永井は将軍綱吉の怒りに触れ、扇野藩へ流罪となる。
 流罪とはいえ旗本である永井を受け入れるに際してどう対処すべきか扇野藩でも困窮する。
 結果、永井の世話をする女人を置くことが決まり、紗英にその任が回ってくる。
 男と女の心の動きを縦糸に、浅野の最後の言葉を知ろうと永井のもとを訪れる赤穂の浪士たちの思いを横糸にして、物語は見事な刺繍を編んでいく。

 刺繍には色糸が使われる。ここではそれが季節そのものでもある。
 タイトルになっている「はだれ雪」もそうだし、季節の花々も物語に色をつけていく。
 藩主の無念の切腹から討ち入りまでわずか2年弱、この時間も赤穂浪士の討ち入りが日本人に愛される理由の一つかもしれない。

 討ち入りがなって扇野藩に預けられた永井と紗英にも危険が迫っていく。
 「悲運に負けて立ち止まらぬこと、歩き続けること」こそ大事と、永井はいう。赤穂浪士たちと共鳴する永井の言葉である。
 永井こそ48番目の志士である。
 いや、葉室麟もまた常に前を向く志士といっていい。
  
(2016/02/05 投稿)

  芽 「ブログランキング」に参加しています。
     応援よろしくお願いします。
     (↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 今日もクリックありがとうございます)
 
    にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ

レビュープラス
Secret

TrackBackURL
→http://hontasu.blog49.fc2.com/tb.php/2727-586bc2cc