プレゼント 書評こぼれ話

  重松清さんは好きな作家のひとりです。
  読んだ作品の数も
  それなりに多いと思います。
  だから、新刊の『たんぽぽ団地』も
  楽しみにして読み始めました。
  でも、結論からいえば
  あまりいい作品ではなかったように
  思います。
  どうもあるパターンにはまりすぎている感じが
  拭えません。
  もちろん、重松清さんならではのテーマなり
  書き方がありますし、
  それを楽しみにしている読者も多いでしょうが
  ここまで構成が破たんしていると
  やはり残念でなりません。
  このあたりでまったく違う世界を
  作り上げる方はいいのではないかとも
  思ってしまいます。
  そうはさせまいとする
  編集者はいるでしょうが。
  さて。

  じゃあ、読もう。



sai.wingpen  あの重松清でも                   

 新しいものもいつかは古くなる。
 人間もまたしかり。
 この物語は、昭和35年に完成した団地を舞台に描かれている。
 出来たばかりの団地に住んだ若い家族も半世紀の時を経れば、連れ合いが亡くなることもあろう、子どもが家を出てしまうこともあっただろう、急な坂道は楽しい語らいの場であったとしても今では負担ばかりが大きい。
 住居というのは人と密接な関係が持っているから、余計に時の残酷さを感じる。

 その団地が昭和48年にテレビドラマの舞台となったことがある。タイトルは「たんぽぽ団地の秘密」。けっして好評というわけではなかったし、主人公を演じた少年ワタルはその後売れないまま52歳になっている。
 その団地が2014年に老朽化で取り壊されるという。
 団地ができて、54年。古びたのは団地だけではない。かつてそこに住んだ人たちも家族も年をとった。
 妻を亡くして一人団地に残った父親に引っ越しの決断をさせるために団地を訪れる直樹とその娘杏奈。二人がそこで見たものは何であったか。

 重松清の筆はいつものように達者で、親と子、孫娘と亡くなった祖母、子どものいじめ問題と多彩な世界を描いているが、どうも全体の出来がよくない。
 いつの間にかSFの世界のように、昭和48年のテレビドラマが入り込んできたり、主人公の杏奈たちが夢の世界からの指令のままに現実を探索したり、どうにでもこしらえてしまえる世界になってしまっているのが残念だ。
 いじめの問題にしても、その解決は中途半端で、いやそもそも何も解決されていない。
 読む者としては、どうして重松はこういう作品に仕上げてしまったのか理解に苦しむ。

 重松はあまりにも同じような世界を描き過ぎている気がする。
 重松のような筆巧者であっても、さすがに何度もなんども同じような関係、同じような問題を描けば、そのドラマ性は枯渇してくるだろう。
 もちろん、重松がたびたび描いてきた子どものいじめの問題にしても今だに何も解決していない。
 それでも、ここまで作品が枯れてしまうのであれば、重松は違う世界を描いた方はいいのではないか。
 筆だって年をとるのだから。
  
(2016/02/27 投稿)

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