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プレゼント 書評こぼれ話

  今回紹介した、重松清さんの『あの歌が聞こえる』は、
  新潮文庫のオリジナル作品です。
  単行本でも売れると思うのですが、
  文庫本で刊行されたのですから、読者としてはうれしいですね。
  物語の背景となった1975年といえば、
  私は二十歳。
  この作品の中で紹介されている何曲かの歌は懐かしい。
  私にも思い出の歌がいくつかあります。
  そのなかでも、井上陽水さんの『心もよう』は思い出深い。
  私が浪人をしている夏に、
  高校時代好きだった女の子からもらった暑中見舞いに
  その曲の一節が書かれていました。
  彼女は高校卒業と同時に東京に転居していました。
  今でも井上陽水さんの『心もよう』を聞くと、
  そのことを思い出します。
  そして、次の春、私も東京に行くのですが・・・。
  なんだか重松清さんばりの物語みたいになりそうですね。
  そんなこととか思い出させてくれる一冊です。

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あの歌がきこえる (新潮文庫 し 43-14)あの歌がきこえる (新潮文庫 し 43-14)
(2009/06/27)
重松 清

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sai.wingpen  私だけの「あの歌」をききたくて               矢印 bk1書評ページへ

 誰にしも懐かしい歌がある。思い出に刻まれた歌がある。メロディーや歌詞を思い出せば、それとともに浮かびあがる風景や時の記憶があって、時にそれらは鼻の奥をつんとさせる。
 そんな心情を描かせれば、重松清は当代一の作家だろう。
 本州の西端に近い港町を舞台に、昭和50年(1975年)からの六年間を描いた連作集の、それぞれの作品のタイトルとなった歌は、「いつか街で会ったなら」「戦争を知らない子供たち」「オクラホマ・ミキサー」「案山子」「さよなら」など、全部で十二曲。
 その時代であったら、あの歌も流行った、この唄も忘れがたい、人それぞれあるとしても、これは三人の少年が中学一年から高校三年までに出会った「あの歌」であるから仕方がない。
 これは彼らの青春物語なのだ。
 主人公のシュウとは相性のよくないコウジに妙な噂がたつ。コウジの母親が家出をしたという、嫌な噂。普段は仲のよくないコウジだが、元気がないのが気にかかるシュウ。小学校の頃からの友だちであるお調子者のヤスオをうまくつかって、コウジに接近しようとするのだが、それもうまくいかない。
三人の登場人物のそれぞれの性格描写と、三人の友情の始まりを描いた「いつか街で会ったなら」。「戦争を知らない子供たち」を大声で歌いながらもまだ戦争がそんなに遠い記憶でなかった頃の苦い思い出を描いた「戦争を知らない子供たち」。人生初めての岐路となる高校受験でシュウが密かに思いを寄せる彼女が不合格となる「好きだった人」。
 同じ高校に入学はしたものの、いくつかのエピソードをはさみながら、やがてそんな三人にも別々の道が訪れる。そして、高校の卒業の日、物語は三人の友情のはじまりとなったエピソードへ戻っていく。

 「俺の生きている毎日は、悲しいぐらい、ガキの日々だった」(169頁)。
 そんなシュウたちの思いに重なる歌の数々は、誰もがたどる、おとなへの道の前奏曲だ。

 これは重松清が紡いだ、あの頃だ。
 同じような心の痛みやどうしようもない苛立ちは似ていても、これは重松清の物語だ。私の物語ではない。あなたの物語でもない。
 それなのに、どうしてこんなにも切ないのだろう。それは、心に寄り添って励ましてくれた、あの頃の歌たちとどこか似ている。
 気がつけば、私だけの「あの歌がきこえる」。
  
(2009/07/28 投稿)
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