プレゼント 書評こぼれ話

  今日3月31日は
  6年前に亡くなった弟の誕生日。
  亡くなったのが3月でしたが
  誕生日には少し足りませんでした。
  生きていれば
  今年59歳になっていました。
  亡くなった人の時間は
  その時のままとまっているのに
  生きているこちらばかりが
  年をとるのも
  切ないもの。
  今日紹介する
  川本三郎さんの『ひとり居の記』にも
  そんな思いがあります。
  川本三郎さんは
  2008年に奥様を亡くされています。
  風に吹かれて
  どこかに行ってみたくなる
  そんな一冊です。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  ふと山頭火を思い出していた                   

 映画評論家であり文芸評論家でもある川本三郎さんが奥様を亡くされたのは2008年のこと。その愛妻との思い出と喪失の心情を綴った『いまも、君を想う』は読者の、しかも男性の、心にしんしんと涙を誘う作品である。
 その川本さんが『ひとり居の記』なるタイトルで、雑誌「東京人」に2012年から2015年にかけて掲載したエッセイをまとめた。
 どれほど淋しい男の生活かと、これは読者である私が勝手に想像した、読んでみたのであるが、川本さんの行動力に舌を巻いた紀行日記同然のエッセイである。

 「毎月のように日本のどこかの町に出かけている。(中略)車の運転をしないので、鉄道の旅になる。町に着いたらひたすら歩く。歩くのが好きなので、多少の距離は苦にならない」と、「あとがき」にある。
 連載の途中で古稀になった川本さんが、その健脚ぶりはお見事というしかない。それ以上に常に出かけているという活動力に頭が下がる。
 動いていないと愛妻の喪失感に捕われてしまうのを恐れているかのようだ。

 そして、川本さんは鉄道ファンでもあるので、道中の鉄道案内がいい。旅情をかきたててくる。それに映画評論家でもあって、この駅に高倉健が立ったとか、この場所は「男はつらいよ」の撮影現場だったとか、鉄道ファンだけでなく映画ファンも楽しめる。
 いやいや、それだけではない。永井荷風や北原白秋、さらには林芙美子の研究本まで出版している川本さんだから、場所場所で荷風や芙美子だけでなくさまざまな文人を登場させる丁寧さなのである。
 だから、読者はこの本を鉄道ファンとして読むか映画ファンとして読むか文芸ファンとして読むかということになる。(実はほかにも音楽ファンとして堪能できる場面や美術ファンとしても満足できるところなどもある)

 そうして、毎日出歩いている川本さんだが、どうしてか妻のいない寂しさが文字の背景からひょっこりと浮かびあがってきたりする。
 「どうしようもない私が歩いている」、山頭火のそんな句が頭に浮かんだ。
  
(2016/03/31 投稿)

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