プレゼント 書評こぼれ話

  今日も漫画本の紹介です。
  ただ、昨日紹介した上村一夫とは大違いの
  漫画です。
  岡野雄一さんの『ペコロスの母の贈り物』。
  漫画というのは
  実に広い世界を表現できる方法です。
  上村一夫のような官能も描くことができれば
  この岡野雄一さんの作品のように
  介護の世界であったり
  私小説のような世界であったり
  自在に表現できます。
  岡野雄一さんは
  『ペコロスの母に会いに行く』で
  脚光を浴びましたが
  私は今回のような作品の方が
  好きです。
  文学の世界でいえば
  三浦哲郎のような
  世界観です。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  母を恋ふる記                   

 『ペコロスの母に会いに行く』で介護マンガと称賛された岡野雄一の、『ペコロスの母の玉手箱』に続く作品集である。
 人気作となった最初の作品では認知症をわずらってグループホームで暮らす母親との生活が描かれているが、その母親光江(漫画ではみつえと平仮名表記)は2014年8月、91歳で亡くなった。
 それ以降の岡野の作品は、第一作以上に母恋いの印象が強くなっている。
 これは漫画版母恋物語だ。

 岡野自身1950年生まれで今初老の域に入りつつある。
 人生を振り返る時期ともいえる。
 そのために母は避けては通れないし、それは父も同様であろう。
 この漫画集には数編のエッセイも収められていて、そのうちの一つが父の思い出である。
 父岡野覚はアララギ派の歌人でもあり、そんな若き日の父の姿がエッセイに綴られている。
 酒の力で憂さを晴らすしかなかった若き父。岡野は「家を建てる」という漫画で、子どもの頃に父から受けた暴力も描きつつ、それでもその時酔いつぶれた父の肩を貸す成長した自分の姿を描いている。
 その時の自分のことを謝りたい、という岡野は、父親ともこうして和解していく。

 母、父、そして長崎で生まれた岡野にはもうひとつ大切な記憶がある。
 原爆である。
 岡野は「戦後5年経って生まれている」と、エッセイの中で振り返る。「手を伸ばせば届く距離にあった、戦争。原爆」。
 「青空(そら)」とつけられた作品には、原爆で妹をなくしたケン坊兄ちゃんが登場する。兄ちゃんは夏になるときまって妹のことを思い出し、血の涙を流すような子どもだった。
 子どもたちがかくれんぼをしている夏。隠れたままで誰にも見つけてもらえない兄ちゃんの妹。
 戦争とか原爆を描いた漫画作品も多いが、この一篇も心に響く作品になっている。

 岡野はその一つひとつは母を媒介にしてたぐりよせていく。
 母の口ぐせであった「生きとかんば!」は母からの贈り物であったと岡野は綴っているが、岡野にくれた母の最大の贈り物は、時間を超える力そのものであったと思える。
  
(2016/04/28 投稿)

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