プレゼント 書評こぼれ話

  今日は
  葉室麟さんの新しい作品
  『辛夷の花』を紹介します。
  辛夷、こぶしは春に咲く白い花です。
  相変わらず
  葉室麟さんの筆は冴えわたっています。
  書評にも書きましたが
  涙がこぼれてきそうで
  困りました。
  本を読んでいて
  思わず笑ってしまうというのも
  きっと傍から見ていて変なものですが
  泣いているのも
  なんとも恥ずかしいものです。
  書評で紹介できませんでしたが
  こんな素敵なセリフがありました。

    生きていくうえでの苦難は、
    ともに生きていくひとを知るためのもの

  この物語でいえば
  志桜里と半五郎の苦難も
  互いの人を知るためのもの。
  いい作品です。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  愛する人のため                   

 庭に植えられた辛夷の木。その蕾を見つめる女人志桜里(しおり)。彼女に「辛夷の花がお好きですか」と声をかける隣に住む半五郎。
 美しい春間近の光景から物語は始まる。
 婚家から不妊ということで離縁された志桜里と何故か抜き身ができないよう紐で結んだ刀をさす半五郎。物語の中心人物の訳がありそうな事情が、この最初の場面で語られていく。
 舞台は九州豊前の小竹藩。ここでは由緒ある三つの家老一族が藩の運営を牛耳っている。
 その体制に藩主頼近が否を唱え、志桜里の父を自身の側近くに抜擢していく。そして、半五郎もまた藩主の覚えめざましく、となれば半五郎が志桜里の家の隣に越してきたのも何やら意味を持ってくる。

 半五郎の刀の紐には過去のつらい事情が絡んでいる。以後、彼は刀を抜くことはない。
 一方、志桜里は離縁されたとはいえ決してうつむく女人ではない。三人の妹と成人が近い弟のため、自身のつらさを封印している。
 そんな二人は次第に惹かれあっていくのだが、互いに自身の心情には頑固で、寄り添うというまでには至らない。
 このあたりの男女の心情は、葉室麟の得意とするところ。読者としては歯ぎしりしたい思いだが、その思いがあるからこそ、後半のクライマックスが生きてくる。

 不覚にも涙が出そうになった。
 大団円ではない。まだ終わりが見えてこない、これから大きな山を迎える場面だった。
 三家老の悪行極まり、志桜里の父の命が狙われる、しかも、志桜里たち家族もまた容赦なく惨殺される可能性もある。
 その時、半五郎はついに刀に結んだ紐を切る。
 正義のためでもあるだろう、しかし、それ以上に志桜里を助けたいという思いが強い。
 志桜里の家で戦いの準備を指示する半五郎。
 その姿を追っているうちに、涙がふっとわいてきた。
 人は愛するもののために自身の命すら返りみることなく、動くことができるのだ。
 決して言葉にはされないが、行動がそのものの心情を明らかにしていく。
 物語はここから一気呵成に進んでいくのだが、ここでは書くのを控えたい。
 最後も納得の美しい終わり方ということだけ記しておく。
  
(2016/05/12 投稿)

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