08/11/2009 どんとこい、貧困!:書評

今日は、「派遣村」村長としてすっかり有名になった、
湯浅誠さんの『どんとこい、貧困!』。
書評にも書きましたが、この本は理論社の「よりみちパンセ」という
中高生向き以上に書かれてシリーズの一冊です。
「派遣切り」であるとか「ワーキングプア」であるとか、
昨年の金融恐慌以来、目にする機会が増えました。
格差も問題も含めて「貧困」の問題はけっして容易なものではありません。
この本の冒頭で「イスとりゲーム」の話がでてきます。
みなさんもやったことがあると思いますが、
いくつかのイスのまわりを歩きながら、
合図とともにイスを取り合うゲームです。
湯浅誠さんは、座れないのはその人のせいではなくて、
今の社会にそのイスが足らないっていうんですよね。
これからはもっとイスが減っていくような気がします。
だから、「貧困」というのは、
今がそうではないだけで、いつなるとも限らない問題でもあります。
高齢者の問題でもそうですが、
今現実にそういう問題に直面しないとわからないことがあります。
夏休みとかお盆休みを利用して、
家族で話し合うのもいいかもしれません。
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「貧困」と「貧乏」はちがう、と著者の湯浅誠氏はいう。「貧困」とは「頼れる人もいなくて、将来も見えてこないような状態」(64頁)であり、単にお金がないことだけを指すのではないとしている。
まず、このことを押さえておかなければ、「貧困」の問題は見えにくくなる。
「中学生以上すべての人」に書かれたこの本は、読者対象が広いぶん、たいへんわかりやすく、丁寧に「貧困」の問題を解説している。中学生だけでなく、おとなの人、とりわけ「勝ち組」といわれるグループを目指そうという若いおとなたちに読んでもらいたい一冊である。
本書は二部構成でできている。前半は、「貧困」問題に常につきまとう当事者たちの「自己責任論」についての誤解とその反駁。後半は、そういう社会を変革するためへの主張、である。
特に、前半部分は多くの人が陥りやすい問題であるから、湯浅氏の反駁を知っておくことは極めて大切なことだと思う。
そもそも仕事がうまくいかなくなったり、生活が立ちゆかなくなったのは、その本人の努力が足りないのではないか、というのが「自己責任論」である。この論がやっかいなのは、それはそうかもしれないなと思わせるものがあることだろう。
「自己責任論」は、「貧困」を個人の問題に焦点をあてた議論だといえる。
湯浅氏は、こういう「自己責任論」は、「弱っている相手を黙らせる」ことであり、社会全体の問題として「出てこないように蓋を」してしまうことが問題であるとしている。つまり、「貧困」は社会の問題であるということである。
個人と社会の関係は簡単に解きほぐせない問題だろう。ただいえることは、現代の社会が「頼れる人もいなくて、将来も見えてこないような状態」の個人を容易に生み出すものであるという認識が必要ではないだろうか。であるならば、そういう個人を受け入れる社会もまた作りださなければならないはずである。
「貧困」の問題とは、「貧困」で苦しむ人だけのものではない。そういうものを生み出し、さらには排除しようとする社会の問題だし、その社会を受け入れている私たちの問題でもあるのだ。
この一冊がそういう契機になればいい。
(2009/08/11 投稿)
特に、前半部分は多くの人が陥りやすい問題であるから、湯浅氏の反駁を知っておくことは極めて大切なことだと思う。
そもそも仕事がうまくいかなくなったり、生活が立ちゆかなくなったのは、その本人の努力が足りないのではないか、というのが「自己責任論」である。この論がやっかいなのは、それはそうかもしれないなと思わせるものがあることだろう。
「自己責任論」は、「貧困」を個人の問題に焦点をあてた議論だといえる。
湯浅氏は、こういう「自己責任論」は、「弱っている相手を黙らせる」ことであり、社会全体の問題として「出てこないように蓋を」してしまうことが問題であるとしている。つまり、「貧困」は社会の問題であるということである。
個人と社会の関係は簡単に解きほぐせない問題だろう。ただいえることは、現代の社会が「頼れる人もいなくて、将来も見えてこないような状態」の個人を容易に生み出すものであるという認識が必要ではないだろうか。であるならば、そういう個人を受け入れる社会もまた作りださなければならないはずである。
「貧困」の問題とは、「貧困」で苦しむ人だけのものではない。そういうものを生み出し、さらには排除しようとする社会の問題だし、その社会を受け入れている私たちの問題でもあるのだ。
この一冊がそういう契機になればいい。
(2009/08/11 投稿)
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