08/18/2009 ロードショーが待ち遠しい:書評

今日は、藤森益弘さんの『ロードショーが待ち遠しい』という、
楽しい映画の本を紹介します。
副題が「早川龍雄氏の華麗な映画宣伝術」となっていますが、
早川龍雄さんというのは、ワーナー・ブラザースの宣伝部の人です。
私は映画業界の人間でもないので、
早川龍雄さんがどれくらいの有名人なのかは知りませんが、
ちょうど早川さんがワーナー・ブラザースに入社した(1963年)以降、
しばらくして、私も映画の魅力に取りつかれましたから、
この本に出てくる映画の数々が懐かしかったし、
もう夢中で読み進みました。
ちょうど、高校入学した頃ですから、1970年あたりでしょうか、
洋画は「アメリカン・ニュー・シネマ」の後期の頃でした。
この『ロードショーが待ち遠しい』という本のなかでも、
何度もでてきますが、『俺たちに明日はない』(1968年公開)などは、
本当に何度も何度も観ましたね。
高校時代の友人にH君というのがいて、
毎年年賀状にその年に観た映画の題名を全て書いてくるんですよね。
彼で100本以上は観ていたように思いますが、
いつもすごいなぁと羨ましくもあり、感心したりしていました。
だから、私にとっての映画とは、
いつも青春の、甘酸っぱい匂いのするものです。
今回の書評のタイトル「映画に愛をこめて」は、
映画ファンならおわかりのとおり、
名匠トリュフォー監督が映画に捧げたオマージュのような作品、
『アメリカの夜』(1974年)のサブタイトルから拝借しました。
◆「ブログランキング」に参加しています。
下の「バナー」をクリックすると、このブログの順位がわかりますよ。


![]() | ロードショーが待ち遠しい―早川龍雄氏の華麗な映画宣伝術 (2009/07) 藤森 益弘 商品詳細を見る |


若い頃なりたかったもののひとつが、映画会社の宣伝マンだった。
映画ファンなら一度は夢みた職業ではないだろうか。なによりも好きな映画がタダで思う存分観れそうな気がした。そうして、自分の好きな映画を宣伝し、映画館を満員にする。そんなことを考えると、胸の奥が震え出しそうな気分になれた。もちろん、今では若かりし頃のあさき夢みしだが。
この本は、そんな夢の職業についた男の物語である。
本書は、「日本の洋画配給会社で四十年以上にわたって映画宣伝の仕事に携わってきた早川龍雄氏の映画人生を軸に、戦前から戦後、そして現在に至る日本の洋画配給の歴史と映画宣伝の変遷をワーナー・ブラザーズの映画を主に追いかけて」(278頁)描かれた労作である。
しかし、早川龍雄氏個人の物語というよりも、主人公はやはり数多くの「映画」そのものだろう。
早川氏がワーナー・ブラザーズに入社したのは1963年。すでに映画産業は斜陽の一途をたどっていた時期である(ちなみに日本の映画観客数のピークは1958年)。
ただ早川氏も高校時代の三年間に648本の映画を観たというほどの映画好きの青年であり、映画会社への就職は夢のようなできごとだったにちがいない。「好きな映画の仕事ができて、それだけ(給料を)もらって、本当にありがたかったです」というのが、その当時を回想しての早川氏の述懐である。
ただ、早川氏は単に映画が好きだったというだけではない。
この本の成立にも大きく関わることだが、氏は「徹底した記録癖と蒐集癖ともいえる性格」をもっていた。若い頃には鑑賞した映画の作品名や上映館名、その評価等を記載した映画ノートをつけ、映画会社の宣伝マンになってからは広告や批評記事などを蒐集しつづけ、スクラップ・ブックは100冊近くにのぼるという。
そういうものがなければ、映画会社に就職することもなかっただろうし、映画会社で第一線の宣伝マンであり続けることはなかったにちがいない。
そして、それらがなければ、著者の藤森益弘氏のこの著作もまた生まれなかったかもしれない。
著者の作家藤森益弘氏についてふれておくと、あの開高健や山口瞳をゆうした広告制作会社サン・アドでCM製作に携わっていたというから、早川龍雄氏の分野とは極めて近い分野に属していたことになる。
だから、本書は「映画」の本ではあるけれど、広告宣伝に関する多くの記述があり、そういう分野に興味のある人にもお薦めしたい。
そして、何よりも藤森氏自身が映画好きだということだ。
映画好きの著者でなければ、ここまで楽しく描けなかったのではないだろうか。
上映当時の新聞広告も多数収録された、映画ファンにはたまらない一冊である。
(2009/08/17 投稿)
しかし、早川龍雄氏個人の物語というよりも、主人公はやはり数多くの「映画」そのものだろう。
早川氏がワーナー・ブラザーズに入社したのは1963年。すでに映画産業は斜陽の一途をたどっていた時期である(ちなみに日本の映画観客数のピークは1958年)。
ただ早川氏も高校時代の三年間に648本の映画を観たというほどの映画好きの青年であり、映画会社への就職は夢のようなできごとだったにちがいない。「好きな映画の仕事ができて、それだけ(給料を)もらって、本当にありがたかったです」というのが、その当時を回想しての早川氏の述懐である。
ただ、早川氏は単に映画が好きだったというだけではない。
この本の成立にも大きく関わることだが、氏は「徹底した記録癖と蒐集癖ともいえる性格」をもっていた。若い頃には鑑賞した映画の作品名や上映館名、その評価等を記載した映画ノートをつけ、映画会社の宣伝マンになってからは広告や批評記事などを蒐集しつづけ、スクラップ・ブックは100冊近くにのぼるという。
そういうものがなければ、映画会社に就職することもなかっただろうし、映画会社で第一線の宣伝マンであり続けることはなかったにちがいない。
そして、それらがなければ、著者の藤森益弘氏のこの著作もまた生まれなかったかもしれない。
著者の作家藤森益弘氏についてふれておくと、あの開高健や山口瞳をゆうした広告制作会社サン・アドでCM製作に携わっていたというから、早川龍雄氏の分野とは極めて近い分野に属していたことになる。
だから、本書は「映画」の本ではあるけれど、広告宣伝に関する多くの記述があり、そういう分野に興味のある人にもお薦めしたい。
そして、何よりも藤森氏自身が映画好きだということだ。
映画好きの著者でなければ、ここまで楽しく描けなかったのではないだろうか。
上映当時の新聞広告も多数収録された、映画ファンにはたまらない一冊である。
(2009/08/17 投稿)
| Home |