プレゼント 書評こぼれ話

  今日紹介するのは
  三島由紀夫の『美しい星』。
  この本も
  まさに若い時に読みそびれた作品。
  三島由紀夫が自決したのは
  1970年11月。
  私は15歳。
  高校1年の時。
  もちろんそれ以前から三島由紀夫の名前は
  知っていましたよ。
  『金閣寺』とか『仮面の告白』なんかは
  読んでいたと思います。
  三島が亡くなって
  三島作品を読破しようと思ったこともありましたが
  頓挫。
  かなり多くの作品を
  読みそびれました。
  私にとって
  三島由紀夫はそういう作家です。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  三島由紀夫ってやっぱりすごいと思ってしまう                   

 三島由紀夫が昭和37年に書いたSF仕立ての長編小説である。
 この時、三島は37歳。
 SF仕立てと書いたのは、この作品の登場人物である埼玉県飯能市に住む大杉重一郎とその妻、そして二人の子供(上が男性で下が女性)の四人家族は宇宙人だと、少なくとも全員が認識していることになっている。
 実際彼らが本当の宇宙人であるのか一種の狂気であるのか明確には記されていない。
 少なくとも大杉一家は核の時代に生きる人類を救済しようとする善の宇宙人であり、一方人類など救うべきではないという仙台に住む、こちらの真の宇宙人なのか不明の三人組の男が登場する。

 この作品が書かれた昭和37年というのはどういう時代であったか。
 キューバ危機といわれたアメリカと旧ソ連が一触即発の事態に陥ったのが、この年の秋である。
 そういう時代の空気を三島は実に敏感に嗅ぎとっている。
 もし大杉一家を狂気と呼ぶなら、現実に核の釦を押しかけた人類もまた狂気というしかない。
三島の文学的価値の高さは時代を見事に切り取る行為であり、その一方で芸術至上主義な考えを示しながらも、その材料として宇宙人という極めて斬新なものを持ってきた点にある。
 三島ほど時代と寄り添った作家はいなかったのではないか。

 この作品においては大杉と仙台からの三人組が人類の運命について論争する第八章、第九章がやはり読みごたえ十分だ。
 こういう丁々発止のやりとりは、最近ではあまり読むことはない。
 三島とその時代ならではの産物なのだろうか。
  
(2016/09/14 投稿)

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