10/28/2016 カラー版 本ができるまで(岩波書店編集部):再録書評「本の匂い」

読書週間が始まったので
今日も本についての本を
再録書評で紹介します。
岩波ジュニア新書の一冊、
『カラー版 本ができるまで』です。
この書評を書いたのが
2003年ですから
なんと13年前の文章なんですね。
この頃、きっと本をたくさん買っていたんでしょうね。
最近は図書館で借りることが多くなったので
この書評にあるような
「本の匂い」の至福感は少なくなりました。
年を重ねるのは
いいことばかりが増えることでは
ありません。
いざ、読書。

私には少し変な癖がある。
本好きな人なら誰もがしていることかもしれないが、私の変わった癖というのは買ったばかりの本の匂いを嗅ぐことなのだ。本屋さんでお金を払って手にした新刊を、家に帰るのも待ちきれずに、開いたページに鼻を近づけ、すぅーつと匂いを嗅いでみる。紙の匂いなのかインクの匂いなのか、今まで封印されていたものがにわかに立ち上がってくるようで、その新しい本が初めて自分のものになったと思える時でもある。
もしかしたら、その時が本を読むという行為の、もっとも至福の瞬間かもしれない。
ルネッサンスの三大発明といえば「火薬」「羅針盤」そして「活版印刷」というのは、若い頃に習った。
そして、「活版印刷」の発明がグーテンベルクというのは有名だが、活字を使った印刷はすでにあったというから発明というより技術革新だったといえる。
グーテンベルクの功績は、活字に用いた金属の開発、木製印刷機の開発、そして油性インキの製造だという。
これらにより情報が多くの人に広がるようになったのだから、「活版印刷」は当時の情報革命であったといえる。
これらは私の知識ではなく、若い人向きに書かれたこの新書本から教えられたことだ。
そして、この本はグーテンベルクの発明以後の、多くの人による改良の歴史と現代の印刷技術を東京都文京区にある印刷博物館の探訪と印刷工場の現場見学という手法でやさしく説明している。
ジュニア新書であるけれど、本好きの人なら読んでおきたい一冊である。
私たちがなにげなく手にする本が、多くの人の努力と工夫からできていることを知ることで、もっと本が身近になるのではないだろうか。
本の匂い。
それは紙の匂いでもあり、インクの匂いでもある。
そして、その本に関わった多くの人の汗のにおいでもあるし、私たちを明日につなげてくれる希望の匂いでもある。私の本の匂いを嗅ぐ癖は治りそうもない。
(2003/07/06 投稿)

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