プレゼント 書評こぼれ話

  年の暮れに
  本棚の整理をしていて
  見つけたのは、この本。
  川上弘美さんの『おめでとう』。
  タイトルだけ読めば
  正月向きの短編集なのだが
  どっこい、
  純粋に
  恋愛短編集でした。
  1月1日の朝日新聞
  川上弘美さんのインタビュー記事が出ていて
  その中で
  川上弘美さんはこんなことを語っていました。

     生まれ育った土地で喜怒哀楽を素直にあらわしながら、
     普通に生活ができるという、
     本当にささやかな幸せをみんなで求めていくことができる世界に、
     住みたいのです。

  よりよく生きるということは

     ささやかなことを、
     素通りしないでじっくりおこなっていく

  ことだとも。
  大げさでなく
  普通の生活に生きる意味を見出すことは
  この短編集にも描かれています。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  恋というものは・・・                   

 恋という言葉に無条件に発熱していた時代が人生の中にはあるが、そういう時期を過ぎて何十年もすれば、川上弘美のこの物語のような静かな恋のたたずまいに心が休まる気配がする。
 静かなといっても何やら奇妙な世界はどうやら川上弘美の好んで描く異界のようなもので、12篇の短編を集めたこの本の表題作にもなっている「おめでとう」は、いたってシンプルなタイトルであるが「西暦三千年一月一日のわたしたちへ」とあるように、遠い未来の私たちに向けた結構ハードな終末劇が描かれている。
 これを恋の情景というにはハードなSFだが、川上弘美的にはここと真直ぐにつながる地平に送られる恋のメッセージといっていい。

 12篇の中にはそれほど異界ではない恋の情景を描いた作品もある。
 やはりそういう作品の方が読みやすいし、心が添えやすい。
 その一つが「冬一日(ひとひ)」。
 ともに家庭を持ちながら逢瀬を繰り返す、トキタさんと私の、冬のある日のお話。
 この日、二人は初めて少し長い時間をトキタさんの弟の留守宅で向かる。
 だからといって何ごとが起こるわけでもない。
 そんな劇的なものをこの作品に求めてはいけない。
 求めるとすれば、二人の会話の、触れそうで触れない、触れないけれどしっかり交わる、そんな妙味であろう。
 こういう作品を味わえるほどの大人になれたら、どんなにいいだろう。

 恋という言葉に無条件に発熱はしないが、ほっと立ちのぼるそんな気配にいつまでも心ときめく人でありたい。
  
(2017/01/03 投稿)

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