プレゼント 書評こぼれ話

  土曜の夜の
  NHKの人気番組といえば
  「ブラタモリ」という旅番組だろう。
  ユニークな視点で土地土地を見て歩く
  タモリ近江友里恵アナウンサーの掛け合いが
  面白い。
  今年になっての初めての放映が「浦安」。
  何故そんなことから書き始めたかというと
  今日紹介する
  吉野弘さんの『詩の一歩手前で』というエッセイの中で
  昭和49年の浦安を
  吉野弘さんも歩いていることが
  書かれています。
  しかも、NHKの番組で。
  そのエッセイの中で吉野弘さんは
  こんなことを書いています。

    漁業にゆきづまった浦安は、まもなく、
    都市化されて小奇麗になる。

  詩人は預言者みたい。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  天使の空間を視る                   

 この文庫本は詩人の吉野弘氏が1981年に刊行したエッセイ集『遊動視点 - くらしとことば』を二分冊にした後半部分です。
 前半は『くらしとことば』としてすでに同文庫から刊行されています。

 吉野弘氏といえば「祝婚歌」という有名な詩があります。
 それと同じくらい有名なのが「夕焼け」という詩。
 夕方の満員電車のなにげない光景を吉野氏の暖かな眼差しが見つめる一篇です。
 そこには何度もなんども席を譲る娘が描かれ、最後には席を譲ることをやめてしまうのですが、そんな娘を吉野氏は「やさしい心の持主」とうたう。
 この詩の「一歩手前」のようなエッセイがこの本の中に載っています。

 エッセイのタイトルが「天使が多ければ、それだけ空間が、より自由になる」。
 タイトル自体は海外の人の言葉ですが、その中で吉野氏は電車の中のさまざまな人間のわがままな姿に眉をひそめています。
 また「人間空間ともいうべき空間、それを感じない人が多いのは…」というエッセイでも電車の中でバックを自分勝手にさげている人の様子を描いています。
 吉野氏にとって、そんな風景のそばに「夕焼け」の娘がいたにちがいありません。
 詩人はどこであっても、しっかりと人間を観察しています。

 詩人というのは意味のない言葉を紡ぐ人ではありません。
 詩人の厳しい目が言葉の向こう側の人間の浅ましさや豊かさを描きだすのだと思います。
 「夕焼け」という詩の最後、吉野氏はこううたっています。
 「やさしい心に責められながら/娘はどこまでゆけるだろう」。
  
(2017/01/13 投稿)

  芽 「ブログランキング」に参加しています。
     応援よろしくお願いします。
     (↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 今日もクリックありがとうございます)
 
    にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ

レビュープラス
Secret

TrackBackURL
→http://hontasu.blog49.fc2.com/tb.php/3079-0b980f82