プレゼント 書評こぼれ話

  今日紹介する
  『「ジュニア」と「官能」の巨匠 富島健夫伝』は
  タイトルでもわかるとおり
  かつて人気を博した作家の評伝です。
  書いたのは荒川佳洋さん。
  巻末の著者プロフィールでは荒川佳洋さんが
  どういう人なんかよくわかりませんが
  とにかく富島健夫という作家に
  ぞっこんなのはよくわかります。
  こんなファンがいて
  富島健夫は幸せです。
  私が富島健夫を読んだのは
  多分中学生の頃だと思う。
  あの当時の学年雑誌には必ずといっていいほど
  富島健夫の小説が載っていたように思う。
  なかでも
  『雪の記憶』の印象が残っているが
  今、なかなか手にするのが難しい。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  富島健夫の記憶                   

 今富島健夫といっても知らない人も多いと思う。
 1998年に66歳で亡くなった作家である。
 代表作でいえば『おさな妻』ということになるのだろうが、作家としての後半期である80年代は官能作家として活躍し川上宗薫や宇野鴻一郎らとともに「官能小説御三家」とも称された。
 では、前半期はどうであったか。
 学生時代に書いた『喪家の狗』で芥川賞候補になったぐらいであるから作家としての力量は十分にあった。そして書いたのが数多くの「ジュニア小説」だった。
 60年から70年代にかけて中学高校であった世代の多くは富島作品を読んだ経験があると思う。
 それぐらい富島の作品はあふれていた。

 しかし、いつしか富島健夫は忘れさられていった。だが、そのことが不名誉なことではない。何故ならそれは富島に始まったことではないからだ。
 作家たちの多くは記憶の果てにうずもれていく。それはたとえ芥川賞作家であってもそうなのだから、富島が埋もれたとしても仕方がないのかもしれない。
 むしろ、富島の幸福はこのぶあつい評伝と巻末に収められた詳細な年譜を書いた荒川佳洋という書き手を得たことだ。
 富島にはそれだけの魅力があった。

 富島の「ジュニア小説」と「官能小説」の間にはギャップがある印象があるが、富島にとってそれは地つながりであったのだと思う。
 「性に悩まない青春などあるはずがない。そこを避けて描く青春文学などありえない、というのが富島の青春文学の基本的な姿勢」と、荒川が看破したとおりだ。
 いずれにしても、荒川の労作に拍手を送りたい。
  
(2017/03/03 投稿)

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