プレゼント 書評こぼれ話

  仕事を辞めて
  もう2年が過ぎました。
  3年めの無所属の時間になって
  気がつけば
  散歩がうまくなった。
  そこかしこに季節の樹木があって
  驚くことばかり。
  こちらはつい先日見つけた
  木蓮。

  CIMG1899_convert_20170404160157.jpg

  あまりの見事さに足がとまった。
  いまのところに住んで20年になるが
  この木蓮のおうちは歩いてわずか2、3分。
  気がつかないものだ。
  家もそうで
  こんなところにこんなお家がという発見も
  路地裏散歩の面白さ。
  今日紹介する潮田登久子さんの『みすず書房旧社屋』も
  まるで散歩で見つけたような一冊。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  街角にふと                   

 みすず書房といえば、フランクルの『夜と霧』を思い浮かべる人も多いと思う。
 良きにつけ悪しきにつけ、少し固めの出版社という印象はある。
 またその装幀は白を基調して、本としての美しさには定評がある。
 歴史をさかのぼれば、終戦間もない昭和21年3月に創業された、戦後の出版社である。
 この本はそんな出版社の社屋を写した写真集ということになるが、ここに記録された本郷3丁目には昭和23年秋に移転している。
 設計したのは芦原義信。最初は平屋立ての建物だった。
 その後、何度かの増築を行い、2階も作られていく。

 しかし、写真で見るかぎりでは、どこから見ても古色蒼然としたアパートにしか見えない。
 失礼な言い方にはなるが、こんなところでベストセラーや話題作が生み出されていたのかと、うっとりとする。
 屋内に入れば、さらに魔界が広がる。
 編集部の机、あるいは倉庫、いたるところに本や資料が氾濫している。
 雑然という言葉がかわいく感じるほどである。
 そんな場所で人が集い、議論する。
 躍動というのはこういうことをいうのだろうか。
 カメラは記録するための道具でありながら、ここに納められた写真は記憶の情感ともいえる。

 時代というより、人がまずあった。
 そう思わせる写真ばかりだ。
 ひとつの出版社の社屋の写真でありながら、どこまでもドラマティックであり、感情がわきあがる気分である。

 その社屋も平成8年解体された。
 解体現場には8月の空が広がっていた。
  
(2017/04/05 投稿)

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