05/06/2017 子どもが本をひらくとき(石井桃子講演録):書評「そこにはいつも本がある」

せっかく子ども読書週間中なので(~5月12日)
石井桃子さんの講演録
『子どもが本をひらくとき』を紹介します。
この本、アマゾンで検索しても
書影が出てこないので
写真でがまんしてください。

これは裏表紙に載っている
石井桃子さんの印だということです。
なんともかわいらしい。
さすが石井桃子さんと
感心してしまいました。
子ども読書週間なんですから
ぜひお子さんと一緒に
本をひらいてみて下さい。
じゃあ、読もう。

作家はものを書いているだけでなく、いろんなところに出向いて、講演をしたりもします。
当然人気の高い人は講演回数も多いのだろう、話もうまくなる。
そういういちいちが記録として残るかといえばそうでもありません。
この本はタイトルにもあるように、児童文学者の石井桃子さんの講演録です。
行ったのが1984年5月12日、石井さんはこの時77歳でした、大阪府立国際児童文学館の開館記念講演として話されたものです。
それが埋もれることなく、今回こうして一冊の本となって刊行されたのは、一人の読者としてうれしいというしかありません。
しかも、この講演で石井さんは自身の半生を静かに語っています。
例えば、『ノンちゃん雲に乗る』を書いた頃のことや『くまのプーさん』との出会い、あるいは岩波少年文庫の刊行にたずさわっていく経緯、「かつら文庫」のこと、そして『子どもの図書館』が売れすぎて家庭図書館がブームになって増刷を断る話など、興味をそそられます。
そんな石井さんでも子どもの本離れを嘆かないわけでもありませんでした。
講演の後半はそのことに触れています。
その中で石井さんは「子どもが本を失ったときに、どういうことになるのか」と問いかけておられて、「言葉というものが失われる」としています。
そして、こんな言葉を引用しています。
「人間は言葉によってのみ人間になれる」。
そして、本がある環境を薦めています。
本を読めなくてもいつもそこに本がある生活、本を読んでいるお母さんがいる生活、そういったことを石井さんは勧めています。
この本は小さな本ですが、石井桃子さんのエキスが詰まった一冊です。
(2017/05/06 投稿)

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