05/17/2017 時の名残り(津村 節子):書評「夫唱婦随は婦唱夫随でもある」

珍しい体験をしました。
珍しいというか
人生初の体験ですね、きっと。
それが夫婦の作家の本を
しかもどちらもエッセイですが
同時に読んだ体験です、
それが昨日紹介した
吉村昭さんの『東京の下町』と
今日紹介する
津村節子さんの『時の名残り』。
寝る前に
夫吉村昭さんの文章を読んで
起きたら
妻である津村節子さんの文章を読む。
これって
貴重の体験だと思うのですが
そんなことを思うのは
私ぐらいかも。
じゃあ、読もう。

津村節子さんが吉村昭さんと結婚したのは、昭和28年吉村さんが26歳、一つ年下の節子さんが25歳の時でした。
大学の文芸部で知り合った二人はともに作家をめざすライバルでもありました。
二人は同人誌で地道に執筆活動を続け、何度か芥川賞直木賞の候補になります。そしてついに節子さんは昭和40年『玩具』で芥川賞を受賞しますが、夫の吉村さんはついにこの賞とは縁を結ぶことはありませんでした。
しかし、吉村さんは作家として大成します。『戦艦武蔵』といったノンフィクション小説を構築し、多くのファンを集めました。
吉村さんは平成18年79歳の生涯を閉じましたが、節子さんは現在も作家としてエッセイも小説も書き続けています。
この本は新潮社のPR誌「波」に平成23年から平成28年春まで書き続けてきたエッセイをまとめたものです。
長い連載でしたからテーマはさまざまで、「旅の思い出や、各地各種の取材、身内のように親しかった編集者の方々の死、(中略)戦時中の青春の思い出」と多岐にわたります。
中でもやはり夫吉村さんを偲んだエッセイは数も多く、この本では「夫の面影」という章でまとめられています。
吉村さんの取材旅行にも足を運んだ節子さんですが、それでも夫のすべてを知っていたわけではありません。
「不思議な夜」というタイトルのエッセイで、吉村さんのなじみのバーに足を踏み入れた節子さんは「かれにはかれの世界があったのだという至極当りまえのこと」に気がついたと綴っています。そんなことに胸をつかれたりしました。
なお、タイトルの「名残り」は「なごり」と読みます。
(2017/05/17 投稿)

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