プレゼント 書評こぼれ話

  今日紹介する
  今村夏子さんの『あひる』は
  第155回芥川賞の候補作となった
  表題作を含む3篇を収録した
  短編集です。
  いつもの書評サイト「本が好き!」から献本
  頂きました。
  読みたかったからうれしい。
  第155回芥川賞候補作は5篇で
  この『あひる』で4篇を読んだことになります。
  つまり、
  受賞作の村田紗耶香さんの『コンビニ人間』、
  崔実さんの『ジニのパズル』、
  山崎ナオコーラさんの『美しい距離』、
  そしてこの作品。
  さすがにこういう回は
  私も初めてです。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  ただそれだけを、書く                   

 思い出せば、第155回芥川賞の候補作は選考委員の宮本輝氏が選評のタイトルに「佳品揃い」と記したように充実していた。
 もちろん、受賞作である村田紗耶香さんの『コンビニ人間』は過去の受賞作と比べても遜色のない名編だし、高樹のぶ子選考委員がその選評すべてをその作品に捧げた『ジニのパズル』も読むごたえある問題作だった。
 そして、メジャーの文芸誌ではないところから候補作に選ばれたこの作品も、多くの選考委員から高い評価を得た。
 中でも小川洋子選考委員は「受賞に至らなかったのは残念」とまで記した。
 その選評の冒頭にこうある。「飼っていたあひるが死ぬ。ただそれだけのことが文学になる、という不思議に、『あひる』は気づかせてくれる」。

 確かにこの作品は飼っていたあひるが死ぬことを描いているが、そこにはぬめっとした手触りのようなものがある。
 あひるを飼うというだけあって、主人公たちが暮らす家は草のにおいがみちていて、どこかに置き忘れてきたような気配が立ち込めている。
 読後感として今村夏子さんという人はお年を召された方かという印象があったのだが、1980年生まれということに驚いた。
 この静謐さはどこから生まれてくるのだろう。

 小川洋子氏がいうように「ただそれだけのこと」ゆえに芥川賞としていささか小品すぎたということもあるのだろう。だが、もし『コンビニ人間』と同じ回の候補でなかったら、小品すぎるということだけでは落選とはならなかったかもしれない。
 それほど完成度が高い作品である。
  
(2017/06/06 投稿)

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