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プレゼント 書評こぼれ話

  私は声が大きい。
  実家の人たちも、みんな声が大きい。
  気性が荒い、大阪の漁師町の出身だからだろうか、
  普通に話していても、まるでケンカをしているようで、
  恥ずかしい。
  だから、児玉清さんを尊敬している。
  児玉清さんの、静かで、ゆったりとした
  話し方にあこがれている。
  児玉清さんが紳士にみえる。
  こちらは、どうしようもないガキである。
  なんとかしたい。
  NHKBSの「週刊ブックレビュー」なんか見ながら、
  いつもそう思っている。
  そんな児玉清さんが監修している本が、
  今回紹介する、ダニエル・ゴットリーブさんという精神分析医さんが
  書いた『人生という名の手紙』である。
  今年の春に、続編的な『人生という名の先生』が出版されたので、
  今日と明日、
  二回つづけて、紹介します。
  今日は、まず、2008年10月に書いた
  『人生という名の手紙』の蔵出し書評です。

人生という名の手紙人生という名の手紙
(2008/06/20)
ダニエル・ゴットリーブ

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sai.wingpen  ビタミンL                     矢印 bk1書評ページへ

 人生にヒントや勇気をくれる本はたくさんある。
 物質が豊かになっていくのに比例するようにして心の問題がクローズアップしてきたのは、科学や医学の領域の学問としての深化が進んだせいだろうか、あるいは物質がある程度充足してようやく心の問題に手が届くようになったせいだろうか。それとも物質の豊かさが心の問題を生んでいるのだろうか。
 いずれにしても書店の棚の一角はなんらかのこれらの本でうまっている。そして、今日もまた誰かの心に勇気をあたえてくれる。

 それらの本を「心のビタミン本」と呼びたい。
 例えばビタミンAは活動(action)を活発にするビタミン本といいたいように。ビタミンBは頭脳(brain)を活性化し、ビタミンEは仕事(economy)を勇気付け、ビタミンFは家族(family)をひとつにする。マルチビタミンとしてLがあって、これは人生(life)全般にヒントを与える。
 もちろんこれらの「心のビタミン本」は弱ってきたなという症状の時だけでなく、日頃から服用することである一定の効果があるだろうが、あくまでもビタミンという補助剤なので実際の効果はあなた自身の心の有り様次第であることを忘れないようにしないといけない。
 また過度の服用は効果の錯覚を及ぼす恐れもあるので、気をつけたいところである。

 本書もそのような「心のビタミン本」の一冊である。それもマルチビタミン、L(life)といったところだろうか。
 精神分析医でもある著者(ダニエル・ゴットリーブ)が自身のお孫さんに宛てた手紙の形式をとって、人生とは、人間とは、を教えてくれるものである。
 「心のビタミン本」には本書のように手紙形式をとるものが少なくない。父から娘へ、娘から父へ、夫から妻へ、妻から夫へ・・・。手紙という伝達手段が心に伝わりやすいのかもしれないし、書くほうも表現しやすいともいえる。
 ただ本書の場合、差出人であるゴットリーブ氏は精神分析医であるとともに三十代での交通事故により四肢麻痺となり車椅子の生活を送っていること、そして氏のメッセージの相手であるお孫さんのサム君は生後まもなく自閉症の診断を受けた少年であること、が他の同様の「心のビタミン本」との違いだろうか。
 そのようななかで、ゴットリーブ氏がたびたびサム君に伝えようとしていることは「素直さ」である。「自分の弱さを、隠さず素直に見せられたら、世界はもっと安全な場所になると、わたしは心から信じている」(90頁)「<わからない>と認めれば、何かすばらしいことが起こるきっかけになるから」(128頁)といったように。
 そして大切なのは、そういった「素直さ」は著者やサム君のように障害をもった人だけに求められるものではないということだ。
 私たちも見栄やプライドという心の障害をもっていることには変わりはない。
 多くの場面でその障害がじゃまをしていないだろうか。恥かしいと躊躇し、どうして自分なのと落胆し、どこかに差別の目をもって人と接する。それは人間として「素直さ」をなくしているからではないだろうか。
 ゴットリーフ氏はそのことを何度もなんどもサム君を通して、私たちに問いかけている。

 サム君に送った氏の最後の一通の中にこんな文章がある。
 「わたしが君に伝えたいのは、ずっと愛してきた人の目をじっとのぞきこんだ時に、心に湧き上がってくる感情だ。哀しさと悲しみと親密さが入り混じった、その感情のダンスを、なんとかして伝えたいと思う」(243頁)。
 著者は「感情のダンス」さえ隠そうとする人間の心の貧しさを嘆き、だからこそ「素直になりなさい」といいたかったにちがいない。
 心の太鼓を打ち鳴らすのは、もちろん、私たち自身である。
  
(2008/10/27 投稿)

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