FC2ブログ
 昼のNHKニュースを見ていて
 葉室麟さんの突然の訃報
 思わず腰が浮きました。
 えっ! と声が出たかもしれません。
 間違いかと思いました。
 でも、NHKが間違うはずもなく
 どうもその時自分がどうこの感情と向き合えばいいのか
 わからなくなりました。

 葉室麟さんが亡くなったのは
 昨日12月23日。
 66歳でした。
 葉室麟さんが『乾山晩愁』でデビューしたのが2005年。
 54歳の遅いデビューでした。
 その後、『蜩ノ記』で第146回直木賞を受賞したのが2012年。
 以降、意欲的に作品を発表し続けました。
 デビューが遅かった分、
 どんどん書かないと残されて時間は多くないと
 葉室麟さん自身が思っていたのでしょう。

 『蜩ノ記』以降
 葉室麟さんの作品をずっと読み続けてきました。
 その多くの作品で胸うたれ
 小説の面白さを堪能させてもらいました。
 2012年7月に書いた
 『蜩ノ記』の書評には作品に接した喜びが
 あふれています。

 ご冥福をお祈りします。

 ありがとうございました、
 葉室麟さん。



sai.wingpen  追悼・葉室麟さん - 再録書評「武士(もののふ)の心」                   

 第146回直木賞受賞作(2012年)。
 あれはバブル経済がはじけた頃だったでしょうか、企業再生の弁護士から「自動車産業が日本経済の牽引者になるとは思わなかった」ということを聞いたことがあります。それによく似た感想ですが、時代小説がここまで日本文学を席巻するとは私は思いませんでした。
 ちょんまげ、刀、侍、そのような道具立てはいずれ廃れていくとみていました。
 何しろ着物を着るという風俗さえ今ではほとんど見かけなくなっています。そういう若い世代にとって時代小説とは時代錯誤も甚だしい文学になると思っていたのです。ところが意外にも、時代小説は今大層な人気を誇るジャンルとなっています。
 直木賞でも定期的に時代小説の新人が受賞します。やはり日本人の血が時代小説を求めるのでしょうか、それとも現代の日本があまりにもぎすぎすしているのでしょうか。
 少なくとも時代小説に人間の魅力を、そしてそれはもしかすると日本人の美点ともいえるかもしれませんが、そういうものを21世紀に生きる私たちは求めている証しのような気さえします。

 葉室麟の直木賞受賞作となったこの作品は、羽根藩という架空の藩を舞台に藩の家譜(藩の歴史書)の作成を任じられた戸田秋谷という人物の生きざまを描いた時代小説です。
 秋谷という人物はかつて評判のいい郡奉行でその後江戸表の中老格用人にものぼりつめた、藩では優秀な逸材でした。ところが、江戸表でのある事件をきっかけにして今は蟄居の身、しかも家譜完成後には切腹を逃れられません。秋谷が起こした事件には何やら陰謀の影がちらつきます。
 そんな秋谷の動向をさぐるべく、庄三郎という若い武士が彼の家に配されます。しかし、その庄三郎は秋谷の振る舞いにいつしか感化されていきます。

 選考委員の一人阿刀田高はこの作品を「姿のよい作品」と評しました。
 時代小説には「腕ききの船頭の操る舟に乗るときみたいに、読者はゆったりと身を委ねて小説を読む楽しみに没頭できる」ものがいいと阿刀田はいいます。現代の時代小説のブームは、読者を心地よくさせるそういう腕ききの船頭のような書き手が現代文学で少なくなったということでもあります。
 この作品における葉室麟の書き手としての姿は、物語の主人公秋谷のように凛としています。
 それこそが「武士(もののふ)の心」というものかと思います。
 重厚な気品のある書き手が時代小説のジャンルにまた誕生したことを喜びたいと思います。
  
(2012/07/07 投稿)

  芽 「ブログランキング」に参加しています。
     応援よろしくお願いします。
     (↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 今日もクリックありがとうございます)
 
    にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
Secret

TrackBackURL
→http://hontasu.blog49.fc2.com/tb.php/3437-ed311a9c