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プレゼント 書評こぼれ話

  子供の頃、我が家の新聞は「毎日新聞」だった。
  なぜ覚えているかというと、
  加藤芳郎さんの『まっぴら君』があったからです。
  あの四コマ漫画が、子供の私に面白かったかというと、
  多分ちっとも面白くなかったはずで、
  しかも加藤芳郎さんのタッチというのは、硬質で、
  たとえば手塚治虫さんの丸っこく柔らかいものとは
  かなり違っていましたから、
  なじみがあるはずもなかったはずなのに、
  当時の朝刊の四コマ漫画『フクちゃん』(横山隆一)よりも
  ものすごく記憶に残っています。
  それは、書評のなかにも書きましたが、
  ちょっと大人ぶっていただけかもしれません。
  今日、紹介する清水勲さんの『四コマ漫画』には
  たくさんの図版が載っているのですが、
  あの谷内六郎さん(週刊新潮の表紙絵で有名)とか、
  柳原良平さん(サントリーの広告で有名)とかが
  四コマ漫画を描いていたことを知りました。
  へえー、と思わずうなってしまいました。

四コマ漫画―北斎から「萌え」まで (岩波新書)四コマ漫画―北斎から「萌え」まで (岩波新書)
(2009/08)
清水 勲

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sai.wingpen  四コマ漫画に歴史をみる              矢印 bk1書評ページへ

 漫画表現の多様性についてはすでに多くの評論で論じられているし、なによりも漫画を愛好するたくさんのファンの数がそれを証明している。
 本書は、一枚絵漫画「カートゥーン」とストーリー漫画「コミック」という代表的な漫画表現に属さない短いコマ漫画を、特に四コマ漫画を主として、江戸時代の『北斎漫画』から現代にいたる一九〇年の歴史をたどる興味深い評論である。
 歴史としての面白さだけでなく、『北斎漫画』から大正期の『のんきな父さん』(麻生豊)、戦中の『轟先生』(秋好馨)、手塚治虫のデビュー作となった『マアチャンの日記帳』、戦後の『サザエさん』(長谷川町子)、『まっぴら君』(加藤芳郎)、そして現代の『ののちゃん』(いしいひさいち)、「萌え」系の『らき☆すた』(美水かがみ)といった作品が図版として七六点も収められているのがうれしい。
 それは単に漫画論というより、まるで思い出の玉手箱のようである。

 四コマ漫画の大きな活躍の舞台は新聞であった。
 その新聞は大抵一家に一紙で、『サザエさん』(朝日新聞)を読んでいる家の子は『フクちゃん』(横山隆一・毎日新聞)や『ほのぼの君』(佃公彦・東京新聞)は読んでいない。だからといって、友達と新聞の四コマ漫画について情報を交換するほど熱心でもない。それでいて、ある月から購読紙を変えることがあって、今まで楽しみにしていた漫画が読めなくなるのが少し淋しかったりした。
 大人のように新聞を読んでいるという、少し背伸びをした風が、新聞の四コマ漫画にはあった。

 本書の後半で、昭和五〇・六〇年代の「雑誌四コマ」の時代が取り上げられている。そのなかに、二人の天才漫画家として紹介されているのが、いしいひさいちと植田まさしである。
 二人に共通していたのは、類まれなユーモアなセンスで、しかも笑いにひねりが加えられていた。そういう点では万人向けではなく、商業雑誌上で実力が発揮される型であったと思うが、この二人はその後、『ののちゃん』(いしいひさいち・朝日新聞)、『コボちゃん』(植田まさし・読売新聞)と一般紙に進出していく。
 そして、見事に開花してみせるのだが、このことは私たちの生活に漫画という表現形式がごく当たり前のように入ってきたことを証明している。

 今『サザエさん』で昭和をよむ試みが朝日新聞紙上で続いているが、単に漫画という以上にそこに描かれた風俗や世相が文化を読み解く資料となりえている証であろう。
 新しい四コマ漫画の描き手たちにもそういう視点を持ちつづけてもらいたい。
  
(2009/10/07 投稿)

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