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プレゼント 書評こぼれ話

  最近読む本読む本、
  みんな長い。
  昨日紹介した朝井まかてさんの
  『雲上雲下』も400ページを超える作品だったし
  どうも全般的に
  長編小説が多くなったような気がします。
  それは文学だけでなく
  映画もそうで
  昔ならせいぜい90分だった映画が
  最近では2時間は当たり前。
  作品が長くなるのは
  表現者が示したいことが多いということもあるでしょうが
  なんでも描けばいいというものではないはず。
  その一方で
  短編小説のアンソロジーも
  特に文庫の世界では
  数多く出版されています。
  文学は一体
  どっちに行くのかな。
  そんな中、
  最近湯川豊さんの『一度は読んでおきたい現代の名短篇』を読んで
  短編小説いいじゃないのと
  再確認したところ。
  だったら、
  短編小説をしっかり読もうと
  新しいカテゴリも立ち上げました。
  その最初の作品が
  田辺聖子さんの『春情蛸の足』。
  この作品は
  湯川豊さんの本を読んで
  読みたいと思ったもので
  その選択はまちがっていなかった。
  とっても
  おもろいでっせ。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  あの時代の気分を思い出しながら読むと、さらにいい                   

 昭和が終わる少し前(1987年)に編まれた、食べ物と恋をテーマにした短編集の表題作となったのが、この作品。
 あるいは「24時間戦えますか」という栄養剤のCMが流れたのが1988年だから、そんな時代の気分が、この作品の主人公杉野にはある。
 かといって、あのCMのようにバリバリの企業戦士でもなく、39歳、4歳と2歳半の男の子を持ついたってどこにでもいる男だ。
 ただこの小説の場合、この時代の雰囲気がとっても生きている。

 さて、この杉野であるが、奥さんとは最近とんとご無沙汰なのである。
 田辺サンはそのあたりのことを「淡泊」と書いたり、「寝てるほうがエエ…」なんていう奥さんの台詞で表現しているが、この作品全体がこういう際どい表現で書かれていながら、ちっとも不快も欲情もわかない。
 田辺サン、さすが。
 その杉野がある日ばったり幼馴染のえみ子と出会う。
 久しぶりに会った二人が向かったのがこじんまりしたおでん屋。
 「大根が薄いべっこう色に煮えて行儀よく重なっている。じゃが芋は、だしに煮含められて琥珀色である」と、おでんを表現する田辺サンの名人芸にしばし舌なめずりしよう。
 きっとこの短編は、このおでんを味わうだけで、半分以上満足できる。

 何十年ぶりかで再会した杉野とえみ子だが、やけぼっくりに火がつきかけて、杉野はするりと身をかわす。
 なぜか。
 杉野はおでん鍋の具材を眺めつつ、じっくり味わいたい男だったのだ。
 きっと彼は「24時間戦う」気など毛頭ない。
  
(2018/05/23 投稿)

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