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プレゼント 書評こぼれ話

  湯川豊さんの
  『一度は読んでおきたい現代の名短篇』は
  おそらくそこで取り上げられている作家たちを
  おさえれば
  現代の日本文学のありようが
  見えてきそうなくらいで
  とっても貴重な1冊です。
  開高健という作家の作品では
  「貝塚をつくる」という短編が
  紹介されていますが、
  私なら今日紹介する
  「玉、砕ける」かな、やっぱり。
  どちらの作品も
  『ロマネ・コンティ・1935年 - 開高健・六つの短編小説―』に
  収められています。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  開高健の短編小説を読むなら、この作品がオススメ                   

 この短編小説の初出は1978年3月の総合誌「文藝春秋」だから、1989年に58歳で亡くなった開高健にとって晩年というには早すぎて、後期の作品とした方がいいだろう。
 ただ、開高はこの後あまり多くの作品を発表していないので、印象的には晩年期の好短編といいたいところだ。

 この時期の開高は「闇」三部作の最後の作品がなかなか出来ず、困窮を極めていた時期であったが、短編小説は燦然と輝く逸品ぞろいである。
 なかでも、この「玉、砕ける」は内容的にはかつての中国の政治事情とか文学事情がわからないといささか困難だが、作品としての構成がとてもいい。
 ある朝どこかの首都で目を覚ました「私」は日本に帰ることを決断する。「私」はベトナム戦争従軍とか世界の紛争地帯を飢えたように渡り歩いていた開高健自身と思われる。
 開高はベトナム戦争を実体験することで、『輝ける闇』と『夏の闇』という記憶にとどめたい長編小説をものにしたが、あとが続かない。
 そんな倦怠が作品全体にある。
 香港の銭湯で垢すり体験をする「私」はまるで皮一枚はがれるくらいの垢をそぎおとされるのだが、それこそ「私」が抱える倦怠の日々そのものだ。
 それが、この都市を去る直前に北京で中国の文学者老舎が殺害されたというニュースを耳にする。
 そのことを「私」に告げた中国人の不安そうな男の前で、けれど「私」の文章はここにきてまるで生き返るかのように精気にあふれる。
 その時、倦怠の象徴のようであった垢の玉が砕け散る。

 開高健はこの作品で1979年に川端康成文学賞を受賞した。
 名短篇である。
  
(2018/06/06 投稿)

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