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プレゼント 書評こぼれ話

  今日は夏至
  一年中で一番昼が長い日。
  言い方を変えれば
  この日を境にして日が短くなっていく。

    地下鉄にかすかな峠ありて夏至      正木 ゆう子

  今年は太宰治没後70年ということで
  今月の読書会で
  私が紹介したのが
  太宰治の『桜桃』。
  久しぶりに読み返したが
  やっぱり、いい。
  この作品は一体これまで何度くらい読んでかしら。
  短いから
  10回?
  20回?
  そこまでいくか。
  桜桃でも食べるか。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  桜桃を食べながら読むと格別の味がする                   

 初出が太宰治の亡くなる昭和23年(1948年)5月に出た雑誌「世界」で、有名な忌日「桜桃忌」はこの作品からとられた。
 文庫本にしてわずか10ページ足らずの短い作品ながら、最晩年の太宰の、なんともいえない悲しさが伝わってくる小説である。

 なんといっても書き出しがいい。
 「子供より親が大事、と思いたい。」
 なんとも身勝手な父の感想ながら、「長女は七歳、長男は四歳、次女は一歳」、そんな子供たちが父も母も圧倒している。
 それでいて、父は放蕩な生活をやめられず、戯れに母にどこに汗をかくかと問えば、母の言う、「この、お乳とお乳のあいだに、…涙の谷、…」。
 そんな家を逃げるように出ていく。
 「生きるという事は、たいへんな事だ。あちこちから鎖がからまっていて、少しでも動くと、血が噴き出す。」。
 出かけた先の飲み屋で桜桃が出る。
 それを見ながら、子供たちが桜桃を食べたこともないことに思いをはせ、それでも「心の中で虚勢みたいに呟く言葉は、子供よりも親が大事。」。

 ここで小説は終わるが、こういう自堕落でいながら、実は「涙の谷」にいるのは太宰自身であったのではないか。
 こんな夫、父は認められないというのは大人の思いで、本人はそれ以上に苦しいのだとどうしてわかってやれないのかというのが、若い読者の思いかもしれない。
 それにしても、うまい。
 声に出して読むと、その巧さが引き立つ。
 まさに太宰治の、珠玉の短編小説だ。
  
(2018/06/21 投稿)

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