06/29/2018 青嵐の坂(葉室 麟):書評「「扇野藩」シリーズ、最後の作品」

本屋さんに行くたびに
葉室麟さんの新刊が出ていないか
探す癖が抜けきらない。
いずれ
新しい本が出ることはなくなるだろうが
もしかしたら
まだ落穂ひろいのように
新しい本が店頭に並ぶこともある。
今日紹介する
『青嵐の坂』が今出ている
葉室麟さんの小説としては
もっとも新しい。
このあとでエッセイが出ているが。
まだ出るかな。
期待をこめて
本屋さんに行くことになる。
じゃあ、読もう。

2017年12月、66歳で急逝した直木賞作家葉室麟さんは生前「月刊葉室」と呼ばれるほど毎月のように新刊が出る人気作家でした。
ただ葉室さんの場合、単に人気作家というよりもデビューが遅かった(50歳からの本格デビュー)せいで自身書くべきことがたくさんあると生き急いでいた感すらあります。
葉室さん自身、こんなにも早く終焉が来るとは思っていなかったでしょうが。
没後も単行本化されていない作品がいくつもあって、この作品もそのひとつ。
2016年4月から2017年1月まで「小説野生時代」に連載されていた、「扇野藩」シリーズの最後の作品となったものです。
「扇野藩」が舞台となった作品は『さわらびの譜』『散り椿』『はだれ雪』、そしてこの作品となります。
主人公の矢吹主馬は、かつて扇野藩で財政改革を推し進めていた中老檜弥八郎の縁戚の下級武士。弥八郎がいわれのない罪により切腹を強いられたあと、その娘那美と結ばれることになる。
主馬は若い頃弥八郎の薫陶を受けており、その意思を継ごうとしている。
一方で弥八郎の息子慶之助は生前父と不仲で、それゆえに父の為したことを凌ごうと懸命であった。
そんな慶之助は弥八郎の実の子ではないとの疑惑が浮上し、若い慶之助は打ちのめされていく。
財政破綻寸前の扇野藩に生き延びる道はあるのか。
自身の命までをかけて彼らが守ろうとしたもの、葉室さんの筆はこの作品でも抑制が効いた重厚さを感じる。
やはり葉室麟さんがいないのは、さびしい。
(2018/06/29 投稿)

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