プレゼント 書評こぼれ話

  今日紹介する
  吉村昭さんの短編小説『』は
  昨日紹介した
  磯田道史さんの『素顔の西郷隆盛』の中で
  参考であげられていたものです。
  この短編で描かれた事件の古文書を
  磯田道史さんも直接読んだことが
  あるそうです。
  もちろん吉村昭さんも
  古文書にあたられて
  作品に仕上げていかれたようです。
  短編ながら
  深さを感じる作品です。
  ちなみにこの短編は
  『幕府軍艦「回天」始末』という本に
  収録されています。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  冷静に記することで緊迫感が増す                   

 初出が1976年7月号の「中央公論」で、単行本で30ページに満たない短編です。
 ここに書かれているのは1824年(文政7年)に薩摩の宝島で実際に起こったイギリスの捕鯨船と薩摩藩との最初の戦闘事件です。
 その頃日本の近海に異国船が出没し始め、事件も起こり出しています。
 この短編にも書かれていますが、1808年にはイギリスの軍艦「フェートン号」が国を偽って長崎に入港してきます。その際には当時の長崎奉行が自刃したそうです。
 しかし、宝島で起こったのは数十人のイギリス人と数人の薩摩藩の役人と島民の戦闘で、そのような事件は「稀なので、この事件に興味をひかれ、執筆した」と、吉村昭は書いています。
 ちなみに、この事件が起こったのは西郷隆盛が生まれる3年前ですが、この事件をきっかけにして鎖国政策をとっていた日本も外国の脅威を実感することになったといわれています。

 イギリスの捕鯨船が何故薩摩の南方の小さな島に上陸をしたのか。
 それは島にいた「牛」が目的だったとあります。
 宝島では砂糖黍畑の開墾や収穫した黍を絞るために牛を飼っていました。それを航行中の捕鯨船が見つけ、「牛」を求めて上陸してきます。
 それに立ち会ったのが数人の薩摩藩士。
 彼らは勇敢にも言葉すらわからないイギリス船員と対峙して、彼らの要求が「牛」であることを理解しますが、これを拒否。強引に「牛」強奪を計るイギリス人に発砲して、うち1名を射殺してしまいます。

 吉村の筆には何の感傷もありません。
 ありませんが、薩摩藩士や島民の恐怖がよくわかります。
 吉村昭の作品の中でもほとんど知られていない短編小説ですが、この事件をきっかけにして時代が大きくうねりだしたのだと思うと、感慨深いものがあります。
  
(2018/07/12 投稿)

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