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プレゼント 書評こぼれ話

  今日は
  沢木耕太郎さん編による
  文春文庫オリジナル
  『山本周五郎名品館1 おたふく』を
  紹介します。
  この中に
  「雨あがる」という作品がありますが
  この短編は
  あの黒澤明監督が映画化しようと構想していたもので
  結局は
  黒澤明監督の弟子であった小泉堯史監督によって
  映画化されました。
  その短編から一節。

     他人を押除けず他人の席を奪わず、
     貧しいけれど真実な方たちに混って、
     機会さえあればみんなに喜こびや望みをお与えになさる、
     このままの貴方もお立派ですわ。


  こんな主人公の作品です。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  短編なのに、この奥深さ                   

 昨年(2017年)没後50年を迎えた山本周五郎だが、その人気は衰えない。
 人気が衰えないということは、新しい読者が没後も次々を生まれているということだ。川端康成のようにノーベル文学賞を受賞した作家もいるが、山本周五郎の場合、たとえ無冠であっても(直木賞を受賞したが辞退)いつまでも愛される作家というのも稀有であろう。
 その生涯、300篇近い短編小説を書いたという山本周五郎であるが、その中から一人の編者で文庫本にして全4冊の短編集がこの春から刊行されている。
 編者が沢木耕太郎さんというのがなんといっても、いい。
 沢木さんが山本周五郎さんのどんな短編を選び、どんな評価をするのか。
 読者にとってこんな楽しみはない。

 その1巻めとなるこの作品集では、掲載順に「あだこ」「晩秋」「おたふく」「菊千代抄」「その木戸を通って」「ちゃん」「松の花」「おさん」「雨あがる」といった9篇が収録されている。
 しかも巻末には、文庫本解説としては少し長めの沢木耕太郎さんの「解説エッセイ」が載っていて、沢木さんの愛読者にとってもうれしい編集になっている。
 沢木さんの解説は一つひとつの作品で書かれているから、解説としても丁寧だ。

 この9篇の短編でいえば、『日本婦道記』の1篇である「松の花」がやはりいいが、藩の改革のために自らを殺して冷酷に生きた側用人と、彼に恨みを持つ娘の交流を描いた「晩秋」がよかった。
 昨年亡くなった葉室麟さんが好きそうなそんな世界観であるが、ぐっと胸深くきた、短編であった。
  
(2018/08/02 投稿)

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