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プレゼント 書評こぼれ話

  やっと、山崎ナオコーラさんのデビュー作にたどりつけました。
  2004年に文藝賞を受賞した『人のセックスを笑うな』です。
  山崎ナオコーラという変な名前の作家が
  いささか挑発的な題名の小説を書いたことは知っていましたが、
  どうも読む気になれませんでした。
  たまたま芥川賞を何度も落としているので、
  どんな作家だろうと気になって『』という作品を読んだのが
  山崎ナオコーラさんに出合うきっかけでした。
  その後、新刊がでるたびに読んできましたが、
  かなり気にいっています。
  だから、どうしても読みそこねたデビュー作『人のセックスを笑うな』を
  読みたくてしかたがありませんでした。
  作家を好きになるということは、
  全部の作品を読まないといけないということではありません。
  いつも読み始めがスタートです。
  そして、前に進むだけでなく、
  時にはこうして元に戻ってみる読み方も
  あっていいのだと思います。
  すっと読めます。
  ぜひ、みなさんも「山崎ナオコーラ」体験を
  してみてください。

人のセックスを笑うな (河出文庫)人のセックスを笑うな (河出文庫)
(2006/10/05)
山崎 ナオコーラ

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sai.wingpen  彼女の名前を笑うな             矢印 bk1書評ページへ

 現代文学の書き手たちのなかにあって、山崎ナオコーラはどのような場所にいるのだろうか。
 山崎ナオコーラはこの『人のセックスを笑うな』で第41回文藝賞(2004年)を受賞しデビューしたのだが、その刺激的な題名と人を小馬鹿にしたようなペンネームであたかも現代文学の最先端にいるかのごとく評価されているのだと思う。
 しかし、そのじつ、山崎ナオコーラはけっして主流にあるのではなく、彼女独自の世界感、あるいは文学感のなかにいるような気がしている。
 それは、すでにこのデビュー作から持ちえた、彼女の感性だといえる。

 美術専門学校に通う十九歳の主人公はその学校の講師である三十九歳の既婚のユリと関係をもっている。「関係をもつ」という奇妙な日本語には、二人のあいだには性行為が存在する、という事実をふくまれているのだが、もっと純粋な恋愛感情が少なくとも主人公にはある。
 きっかけや関係性はともかくとして、あるいは物語の進み具合からすると、あたかも年上の女性のきまぐれにふりまわされているようにも見えるが、主人公の心の揺れ動きはどの時代にあっても若い人たちが経験するだろう、乱暴に扱えば壊れそうな心情を、描いている。
 山崎ナオコーラは物語を書こうとしたのではなく、十九歳の青年の心の風景を言葉にしただけだ。

 そういう点で、山崎ナオコーラは現代文学の多くの書き手たちと一線を画している。
 めざすべき方向がちがうといってもいいし、彼女は物語ではこぼれてしまう心の在り処を実は読者にゆだねているようにみえる。
 作者は物語の後ろに隠れている。そういう照れのような思いが、一見ふざけてみえる「ナオコーラ」というペンネームに託されているのではないだろうか。

 「寂しいから誰かに触りたいなんて、ばかだ」と突き放しつつも、そういう寂しさを人一倍感じるものを作者自身が捨てきれないでいる。
 そういうものに共鳴する。これからも山崎ナオコーラは、私にとって気になる作家であるにちがいない。
  
(2009/10/29 投稿)

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