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  今日は立冬
  いよいよ冬のシーズンです。

    音たてて立冬の道掃かれけり    岸田 稚魚

  今年は暖冬だとか言いますが
  さてどうなるやら。
  今日は葉室麟さんの
  おそらく最後の出版になるだろう
  長編小説『影ぞ恋しき』を
  紹介します。
  葉室麟さんが亡くなったのは
  昨年の12月。
  早いものでまもなく一年になります。
  なんとしても
  惜しい作家を亡くしたものです。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  いとしきもののために生きる                   

 昨年(2017年)12月に急逝した葉室麟さんの、おそらくこれが最後の長編小説ではないだろうか。
 2016年6月から2017年7月にかけて東京新聞をはじめとしたいくつかの地方紙に連載された長編で、作品として主人公である雨宮蔵人三部作の最後の作品ということになる。
 先行する先に二作は『いのちなりけり』『花や散るらん』で、先の作品を私のように未読であっても、もちろん登場人物たちの相関がわかりにくいが随所に説明が入るのに、この作品単独でも楽しめるはずである。

 時代は徳川綱吉期の終焉。その最後に関わった若者冬木清四郎はこの時代に世間の耳目を集めた赤穂浪士討ち入りに関係した吉良家の家人で、この若者を助けようと主人公である雨宮蔵人が幕府の重鎮や隠密相手に命をかける話である。
 雨宮蔵人は元小城藩士で出奔ののち妻咲弥と娘香也とともに鞍馬山で暮らしていたが、清四郎がもたらした事件に次々と巻き込まれていく。
 ただ雨宮蔵人にとって剣は出世や欲のためでなく、愛する妻や娘を守るためのもの、「ひとは皆、おのれにとっていとしき者のために生きている」と信じている武士である。
 だから、この作品は男たちの闘いだけでなく、剣や拳に宿る心意気や、愛するものへの思いが、見事な筆で織られていく。

 葉室麟さんは短い作家生活を疾走し、たくさんの男たちを描いてきたが、常に愛するひとを守ろうとする男たちであった。
 おそらく葉室さんもまたそういう漢(おとこ)であらんと願っていたのだろう。
  
(2018/11/07 投稿)

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