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プレゼント 書評こぼれ話

  吉村昭さんの初期の作品群を
  読み返したいと
  ずっと思っていました。
  吉村昭さんの作品をいつ頃読んだのか
  とても記憶があいまいで
  新潮文庫で『星への旅』が収録された時なのか
  それよりもっと前なのか
  ただ瑞々しい印象だけは今もどこかに
  残ったままです。
  今回中公文庫から
  初期の短編作品が2巻になって刊行されたので
  ようやっと再読、
  といっても何十年ぶりかで読むことになりますが、
  できました。
  今日は
  まずその一巻めを。
  『少女架刑 自選初期短篇集Ⅰ』です。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  吉村昭、ここに始まる                   

 1990年に新潮社から刊行された『吉村昭自選作品集』第一巻が二分冊されて、この秋中公文庫から2冊同時に出版された。
 吉村さんが亡くなったのは2006年7月31日だから、もう10年以上の歳月が過ぎたことになる。
 それがこうして作家デビュー以前の初期短編が名門の文庫のタイトルに名をつらねるのだから、故人も苦笑いをしているやもしれない。

 この一巻めには昭和27年に吉村さんがまだ学習院の学生だった頃に書かれ、当時新進作家として脚光を浴びつつあった三島由紀夫が褒めたという「死体」、結局は受賞出来なかったものの自身として初めて芥川賞候補作になった「鉄橋」、初期の作品群の中で極めて評価の高い、表題作にもなった「少女架刑」、自身の結核治療時代の生活を濃厚に映しつつ生涯愛し続けた弟との関係を描いた「さよと僕たち」、それと「青い骨」、「服喪の夏」、「星と葬礼」といった1960年までの7篇の短編が収められている。

 繰り返すが、この時期吉村さんはほとんど芽のでない新人作家である。
 作家という呼び方もおかしいかもしれない。同人誌に書くしかない、作家未満の人である。
 それでいて、これらの短編の成熟度はうまいというしかない。
 その後の記録小説や時代小説の作家としての活躍はあるとしても、作家デビュー後の初期の段階からこれらの作品は多くの人の喝采を得たし、没後もこうして文庫本になるのだから、吉村昭という作家のすごさというしかない。
 そして、吉村さんは生涯この作家未満の時期の作品の根幹をなす心のありようを喪うことはなかったといえる。
  
(2018/11/29 投稿)

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